9月1日  Frankfurt公演4日目
暗転チェックを待つ間、トレーニングをしている土肥舞子。

「ど真ん中」

とうとう9月に入りました。
日本も涼しくなってきている頃でしょうか、それともまだまだ蒸し暑さが残っているのでしょうか。Frankfurtは8月の中旬から結構涼しくて、朝夜は上着を着ないと寒いくらいです。おまけに今日は朝に雨も降りました。

さて、今日は土曜日、マチネの日でした。昼食後、みんなで輪になり向かい合って「心音」を練習しました。本番のような配置で練習するのとは違って、他の人の動きや打ち方が見えます。やはり輪になると、みんなの気持ちがその輪の中心に集中しやすくなり、その中心に向かって演奏していることで一つの音ができていくような気がしました。舞台の中心には大太鼓があります。そこにみんなの気が集中し、そこに集まった気が一つの大きな音となったら、お客さんの心にも響くのではないでしょうか。

そういえば、ストックホルムのフェスティバルに参加させて頂いた時、新聞にこう書かれてあったそうです。「舞台のど真ん中にある大きな太鼓の音は、まるで地球の中心から響いてきているようだった。」これを聞いた時、本当に私は感動しました。でも、冷静になって自分達を振り返ると、今の自分達にはまだまだそんなすごい音を出せません。まだまだするべきことがあります。
でも、私達の舞台が本当に地球の中心になり、私がその中心だと感じられる舞台を目指して、明日もまた頑張ろうと思います。

 
9月2日  Frankfurt公演最終日
今日はマチネが2時からでした。早めのお昼ご飯は辛(シン)らーめん!唐辛子の辛さにみんな汗だくです。

「声ではなくても」

今日でAlte Operでの公演が終わりました。
5日間7回の公演、それにしても本当にたくさんのお客さんがコンサートに足を運んで下さいました。連日満席の客席は2400人。ちょっと計算してみると、5日間で約16800人の人と出会ったことになります。はてさて、自分は16800人のお客さん1人1人としっかりとコミュニケーションをとれたでしょうか。私の思いは届いたでしょうか。

劇場入り後、毎日、誰もいない客席に向かって自分の目標ややりたいことを叫んでいますが、その時のようにお客さんに全力で思いをぶつけられたのか。声にならなくても体中から溢れ出る想い。伝えたいと思っていることが少しでも届くように、毎日新しい気持ちで演奏をしなければ、と改めて思うフランクフルト最終日でした。

 
9月4日  Braunschweig公演
これが劇場の外です。パッと見ではちょっとわかりずらいポスターにももちろん「YAMATO」が!

「この街」

今日も朝のランニングで1日がスタートしました。初めて来たこの街を、探索を兼ねてランニングするのはとても興味深く、楽しく、おもしろいです。いろんなたくさんの国、街へ行かせて頂いていますが、観光などの時間はなく、また次の街へと移動していきます。その中で、朝のランニングはとても楽しみなのです。

今日はホテルを出たら右へ行き、カウホフというデパートの横の道に入ったら、ちょっとレトロで小さいレストランやバーが並んでいました。そこは朝からおじいちゃんやおばあちゃんが外のテーブルに座ってお茶をしているのがとても似合う雰囲気でした。その小さい通りを抜けたら、今日公演をする劇場へ行ってみることにしました。

数時間後には行くところ、と言ってもやはりどんな劇場なのか、気になって早く見たいものです。劇場はすぐに見つかりました。今日ここへたくさんの人が足を運んで下さり、そして「倭」のコンサートを見てくれると考えると、ドキドキせずにはいられないといった感じでした。ランニングのスピードも心無しか早くなったような気がしました。

 
9月5日  Braunschweig公演2日目

「楽打」より、増井隆興と門貴宏のソロの練習。迫力が命です!

「いきまっせ」

今日の声出しでは、まず「いきまっせー!」の練習をしました。二部の1曲目である「楽打」。その「楽打」はこの「いきまっせー!」から始まります。幕が開き、照明がフワーっと明るくなり、互いの顔が見えてきたら息を思いっきり吸い込んで、そして一斉に叫ぶのです。
「いきまっせー!!」

二部開演前、ザワつく客席を幕の向こう側に感じながら私達はポジションにつきます。その時はもう、とにかくお客さんをびっくりさせてやろうという子供のような気持ちと緊張とで胸の高鳴りはピーク。客電がゆっくり落ちていき、客席が静かになったら幕が開きます。静かな客席は「なにが始まるの?」という静けさです。
その静けさに向かって思いっきり叫びます。
気分は後ろからそーっと近付いて、「わっ!」ですね。

 
9月6日  Munchen公演
これがサーカスクローンの正面玄関です。大きな白いライオンの置物が・・・

「サーカス小屋」

私達は今ミュンヘンにいます。昨日はBraunschweigという街で公演。撤収後、ホテルへ戻り即シャワーを浴び、すぐさまバスに乗り込みました。寝台バスで630キロの旅でした。車中、一人一人ベットに入り、個室状態に。まるで一人旅をしているような気分を味わいながら、眠りにつきました。ミュンヘンに着いたのは、朝の9時頃。今日の劇場はいつもとちょっと違います。なんとサーカス小屋なのです。みなさん、サーカスクローンってご存知ですか?ヨーロッパを回っている大きなサーカス団です。そのサーカスクローンの本拠地がミュンヘンにあり、彼らがツアーに出ている間、このサーカス小屋を他のコンサートなどに貸しているのです。ちなみに「倭」は今回でここは3回目になります。サーカス小屋の客席はもちろん円形です。前だけではなく、真横にもお客さんがいるのです。
さあ、ここはサーカス小屋!
私達もまるで珍獣、猛獣、野獣のようでした。

 
9月7日  Munchen公演2日目
今日はテレビ番組に生出演しました。本番前のサウンドチェック風景です。

「熱」

ミュンヘンは寒い!今日も雨です。過去2回のここでの公演のことを先輩方に聞いたことがありましたが、まず出てくるのは、とにかく暑い!でした。冷房なし、密室状態のサーカス小屋の舞台と客席、お客さんが入ればより一層熱気で温度は上がり、その中で動きまくるもんだから袖に氷がないとやってられなかったとのことでした。

しかも前回は5月だったのだけれど、以上気象でめちゃめちゃ暑かったそうです。でも今年は秋。寒いくらいです。普段劇場で長袖を着ることは滅多にない私達ですが、寒くてジャージをはおらずにはいられない程です。本番前も舞台裏はとても寒く、ノースリーブの衣装で体を冷さないように、直前まで体を動かすようにしています。舞台裏から舞台袖へ入ると、客席の熱気が暖房のようにあったかく感じます。お客さんから熱をもらい、コンサートが始まるのでした。

 
9月8日  Munchen公演3日目

客席から撮った写真です。サーカス小屋はやはり円形になっているのです。

「芸人とは」

私達は太鼓打ちであり、舞台人であり、芸人でありたいと思っています。舞台で太鼓を打ちますが、それが上手いか下手かではなく、その人間がどれだけ人としてすごいかも重要なのです。舞台人とは舞台に立つ人。舞台は客席とは違う世界。客席との距離は近いとしても、そこには見えない境界線があり、一歩入ると全く別の世界です。簡単には入ることができない、触れられないなにかがあると思います。その舞台で自分をさらけ出し、時には自分というものをさらけだし、捨てさり、自分を表現する、そんな芸人でありたいです。

 
9月9日  Munchen公演4日目
サーカス小屋の裏にはラマが!向井大樹、似てません??

「目的」

今日の公演は昨日までとは全然違いました。何が違うのかと言うと、まずはメンバーです。これまでチャンバラでエディンバラフェスティバルに参加されていた松下建命、小川晃子、川内智子、玉井碧が昨日EUツアー組と合流されました。そして今日はその4人と一緒に舞台に立ちました。

久しぶりに一緒に舞台に立たせて頂いて感じた、昨日までの若手ばかりのコンサートにはない、貫禄。何より信頼感が舞台上のいたるところで感じられました。舞台上での会話、コミュニケーション、やりとり、それはやはり言うまでもなく普段の生活の中でつくられてきたものだし、つくっていくものだと考えています。ならば、若手とひとくくりにしている私達の人間関係はと言うと、そのことが大事だということはわかっていて、大事にしていこうとしている段階で、でもなかなかうまくいかず、といった感じであります。

 
9月10日  Day off
地下鉄のインフォメーションで。お兄さんの後ろにはYAMATOポスター!!

「真似だけではダメです」

今日は夕方に昨日の公演のビデオを見て、夕食の後にはみんなで話をしました。松下建命をはじめ、上の方達との公演。そのビデオを見終わった時に出たものはため息ばかりでした。当たり前ではありますが、若手だけのものとはやはり全く違いました。何がどう、どこをどうと、具体的に言えるものばかりではありません。その舞台の雰囲気や滲み出るオーラ、その空気でした。でもそれをいきなり求めてもダメなのだとその時わかったような気がします。先輩諸氏も最初からそうだった訳ではなかったはずです。がむしゃらだった時期も、落ち込むことも今の私達以上に、想像をはるかに超えていろんなことがあり、それを乗り越えてきたからあの演奏があるのです。そこへいきなり到達するのは無理だし、例えできたとしてもそれは上辺だけで中身も思いもありません。私達はとにかくいろんなことに全力でチャレンジし、壁にぶち当たり、時には砕け、踏まれても踏まれても立ち上がる、そんな強い精神をまずは鍛えていきたいと思うのでした。

 
9月11日  Munchen公演5日目
開演前、ちょこんと正座してバチを揃えているのは、上手袖担当の日高元です。そしてここは客席のようですが、実は舞台裏なのです。

「笑う」

サーカスクローンでの公演、2週目が始まりました。しかし、舞台上には太鼓がありません。実は「倭」がDay offだった昨日、このサーカスクローンでは有名な歌手のコンサートがあり、その為に一昨日の「倭」のコンサート終了後に舞台上の太鼓やサブステージ、袖のバチ置きなど全てを一旦片づけたのでした。まあ私達にとっては軽い撤収作業といった感じです。ということで、今日は再びセッティングから始まりました。

さて、今日の練習は「笑う」というものでした。全員舞台前に一列に並び、声を出して笑いました。手を4回叩いてから、会社の社長になって、人をも楽しくさせるようになど、いろんなお題がありましたが、私達はどれも同じで本当に笑っているようにも見えませんでした。声のトーンを変えたり、表情を作ったりという技術的なこともありますが、きっとどこかに少しでも照れや、なりきれない自分がいるのでしょう。

次に「笑いながら練習しろ」という課題が出ました。笑顔ではなく、爆笑です。実際笑うとなにを打っているのかわからなくなるし、打つことを考えるといつのまにか笑いはなくなってしまいました。同時に2つのことをするのは難しかったです。でもかろうじてちょっと打てた時には、声を張り上げて笑うと心が開放的になり、体も柔らかく、大きく開かれるような感覚がありました。

 
9月12日  Munchen公演6日目
「我楽多」の練習。松下建命、玉井碧、大久保哲朗、3人のキャラクターとチャッパの技術が光ります。

「演技ではなく」

「倭」の公演は太鼓のコンサートというより、2時間を通して一つの物語のある舞台だと思っています。一人一人にキャラクターがあり、一曲一曲にストーリーがあり、それで2時間のコンサートが作られているのです。言わば、太鼓を打っているだけでは「倭」のコンサートは出来上がらないとも思っています。では太鼓以外に何が必要かというと、演技力ですね。小川の指導には、よく演技やパントマイムなどがあります。最初のうちは訳もわからず、なぜこんなことをするのだろうと、よく疑問に思いながらただ真似をしていましたが、だんだんと「あ、この動きをしたいならこれが必要だ」と気づくようになりました。そうやって演技的な技術は身に付いていくのでしょう。しかし忘れてならないのは、私達にとっては演技が上手くなることが大事なのではなく、本当に自分がそうなっているかが一番重要なのだということです。演技としてなりきるのではなく、とにかく心も体の全身からもそうなっていないと本当には伝わらないのではないのです。

 
9月13日  Munchen公演7日目
ケータリングルームの壁に、3年前の「倭」のサインを発見!

「何の為」

今日からまたチャンバラプロジェクト組はオランダへ行ってしまいました。とても短い間でしたが、松下建命を始め、先輩の滞在で教えて頂いたことはたくさんありました。

私が最も感じたのは、「倭」はやはり太鼓だけではないということでした。太鼓が上手ければ良いのではなく、そこにどんな想いがあって太鼓を打つのか、どれだけ強い想いなのか、技術も迫力も演技力常に求めなければならないけれど、それは完成することがない。最初から最後まできちんとあるべきは「何の為に太鼓を打つのか」。まず考えるのはそこです。

今日もコンサート。たくさんのお客さんが来て下さいます。そのお客さんの為、応援してくれている人の為、家族の為、それ以外にもいろいろ、人それぞれ思うものは違うかもしれません。でも、何かを思うことで出る音が変わる。今日もやみくもに、何の為にやるのかを叫びました。

 
9月14日  Munchen公演8日目
「颯」の練習。三味線を引き立てる太鼓の地打ちが絶妙です。

「我楽多」

「我楽多」という曲があります。男3人によるチャッパの曲です。今日はその「我楽多」の練習をみんなでしました。と言ってもチャッパを練習したわけではありません。「我楽多」メンバーの大久保哲朗、増井隆興、日高元の周りに立ち、チャッパを持たずに一緒にその場を作るのです。チャッパを持っていない私達がいかに3人の後ろで違和感のない背景になれるかが重要で、そして難しかったです。前でやっている3人と同じ気持ちになっていないと3人が引き立たなくなるし、かと言ってやり過ぎると見ている人の目が散ってしまいます。背景がその場に合っていないと、メインのほうも訳がわからなくなるのです。その逆で、背景がピッタリと合っていたら、メインもより一層光るのです。ソロの地打ちも一緒です。ナイスサポートができるかで自分の盛り上がりもかわるのだと思いました。

 
9月15日  Munchen公演9日目
断髪式。玉井碧の伸び過ぎたちょんまげにハサミを入れる二戸末利華。めちゃめちゃ緊張の瞬間です。

「舞台は生もの」

今週もやってきましたマチネです。いつもより1時間早く劇場に入り、早速声出しからスタートです。この日課となってきている声出しを、ただ単にの1日のスケジュールの1つにはしたくないと思っています。今日は今日しかない。長い歴史の中でなんてったって1回しかありません。毎日同じように公演があり、1日のスケジュールはまったく同じだとしても、毎日新しい空気の中で今日のモノを作っていきたいです。
舞台はいきものだと最近よく思うようになりました。予め出来ている「段取り」を見せたいのではなく、その日、その時舞台上で生まれ作られていくモノを見せたいのです。
いや多分、それを私が実感したいのだと思います。
今日は今日しかない、今日しか見れない舞台をしたい。
だから今日の叫びを!

 
9月16日  Munchen公演最終日
ラスト劇場入りに記念撮影!ラスト公演頑張るで!!

「立つ鳥後を濁さず」

10日間のサーカスクローン公演も今日がとうとうラストとなりました。通い慣れたこのサーカス小屋とも今日でお別れです。私達は今、世界各国、各地を回らせてもらっていますが、行く先々では、なんとも住みやすい環境を整えて頂いています。うわーっと驚くような高級なホテルをはじめ、快適な大型バス、名だたる劇場、立派な楽屋。自炊が欠かせない私達の為にあらゆるところでキッチンを使わせてもらったり、別にケータリングルームを設けてもらったり、洗濯機を借りたり、考えるとたくさんのことが挙げられます。

そんな中、今日、キッチンの使い方があまりにも汚いことに一人のメンバーが気付き、掃除をしようと言いだしました。よく見ると確かに汚い・・・。何でも用意してもらえる環境に甘え、キッチンも楽屋も当たり前のように、自分達のもののように使い、使わせてもらっているという感覚が薄れていたことに反省でした。昔は日本の学校公演に行ったら、自分達が演奏させてもらうのだから、せめて出来る事をと思い、体育館中を掃除していたという話を上の方に聞いたことがあります。学校中をピカピカにするつもりで行っていたそうです。それを思ったら、ましてや自分達が使わせてもらった所なのだから、来た時よりもきれいにしてなんぼですよね。反省。

 
9月17日  移動日
ホテルの近くのスーパー。レジに並んでいるのは玉井碧です。

「ヨーロッパツアー最終地へ」

2月から始まった2007年ヨーロッパツアーもとうとう残すところ一都市になりました。その最後の一週間を過ごすのはオーストリアのBregenzブレゲンツという「倭」初上陸の街です。思い起こせば2月から、本当にいろんな所に行かせて頂きました。私が初めての土地はもちろんたくさんありましたが、「倭」の新たな足跡も増えました。その足跡はその年、その時、そのメンバーによって違うような気がします。どこにどんな足跡を残してこれたのか、またそこへ行った時に自分達が納得できる足跡を残していたいものです。

 
9月18日  Bregenz公演1日目
初日の今日は、通しリハーサルがありました。ある意味マチネです。

「カウントダウンスタート」

EUツアー最終地での公演が今日からスタートです。いつものアンパックやバミリやフォーカス、サウンドチェックもヨーロッパ最後だと思うと、心なしか一つ一つに気持ちがこもっていたように感じました。全てに「ラスト」という言葉をつけて言いたくなったり・・・。ちょっとオセンチになりすぎでしょうか。でも、毎日同じ作業を繰り返す中にメリハリをつけるには、何でもないようなことにまで自分達で問題点を見つけたり、大したことないことを深く考えてみたり、それが無理矢理なこじ付けだとしてもいいと思っています。
とにかく、もうヨーロッパツアーも残すところあと6日! 公演回数は7回!
カウントダウンが始まっているのです。
今日はなんと40人ものジャーナリストが見にきているという中で演奏。
終ってからはちょっとしたパーティーにも参加させて頂きました。

 
9月19日  Bregenz公演2日目
最後はやっぱりこれでしょう!「セイヤー!!」

「楽しむ」

今日はワークショップがありました。指揮を取るのはお馴染み大久保哲朗。何事もそうですが、最初のうちは慣れないことに緊張と戸惑いと不安とがついて回るものです。このワークショップに関しても、以前は大久保哲朗がメチャメチャ緊張しているのを感じていました。でも何度と回数を重ねるうちにそれは必ず板についてくるものですね。今日の大久保哲朗はワークショップ自体をとても楽しんいたように見えました。写真を撮らせて頂いていた私もレンズを覗きながら顔がにやけていました。

コンサートでもそうだと思うのですが、お客さんに楽しんでもらうには、まず自分がどれだけ楽しんでいるかが重要ではないでしょうか。舞台に立っている人が心から楽しんでいればいるほどにお客さんのテンションも上がり、同じ感情になれるのではないでしょうか。そして舞台上と客席が一体となれるのではないでしょうか。

 
9月20日  Bregenz公演3日目
私達が公演をしている劇場の裏側に、巨大な野外ステージが!!劇場入り前にちょっと見学するメンバー。「TOSCA」という演目のオペラが行なわれていたそうです。

「押さえどころ」

今日、「烈火」の練習がありました。みなさん「烈火」をご存知でしょうか。曲の始めにお客さんと手拍子でのやりとりがありるのですが、今、その役に日高元が挑戦しています。上手袖から締太鼓を持って登場するところから始まるのですが、なんとその登場シーンでまずダメ出しでした。歩き方がなんとも不自然なのです。締太鼓を持っているせいか、肩に力が入っていたり、足音を鳴らさないようにと忍び足になっていたり、違和感はいたるところで感じられました。子供が緊張して右手右足が一緒に出ることってありますよね、そんなぎこちなさです。
小川は、足の裏の感覚が大事だと言いました。日高元の演じる役がどんな役であろうと、例えば軽いキャラクターであっても、足の裏はしっかり地面を掴み、地球の中心に向かって立っていることを意識していないといけないのです。
安定感のある肉体、そして舞台。その中でこそ、とび跳ねることが出来るのです。

 
9月21日目 Bregenz公演4日目
今日は公演後にパーティーで「楽打」を演奏しました。

「目」

昨日のレポートをご覧頂けたでしょうか。今私達が公演をさせて頂いている劇場の裏に、巨大な野外ステージがあります。湖に浮いているように作られたそれは、まあ、簡単に言うと「普通のステージ」ではありません。床は大きく波うち、壁からはとてつもなく大きい目、瞳は飛び出しています。しかも動くのです。観光地の1つにもなっているこの劇場、毎日団体が見学にきていました。そして、今日は特別にその巨大野外ステージの裏側を見せて頂きました。TOSCAという演目のオペラの舞台で、客席はなんと7000人ものシートがあるとのこと。裏側だけではなく、舞台上へも連れて行って頂きました。実際に舞台上に立つと、その目玉のデカさに驚きでした。その目玉には、みんなを見守っているということと、監視しているという2つの意味があるそうです。そんな舞台でのオペラは一体どんなにすごいのでしょう。想像はつきませんが、何かを強く訴えかけられているように感じました。

 
9月22日  Bregenz公演5日目
今日は空き時間に下半身トレーニングを兼ねて足漕ぎボート競走をしました。優勝は、玉井碧、東沙織、二戸末利華チームでした。

「うた」

今年から始まった心音プログラム、そのラストの曲「心音」では歌をうたうシーンがあります。今日はみんなでその歌の練習をしました。「流れゆく時は儚く 夢を歌えば打ちふるう我が心」からこの歌は始まります。私が一番グッとくるところは、最後の「生きている今日、祈る明日を」という歌詞です。

「心音」は赤ちゃんがおなかの中で聞くお母さんの温かく、そして優しい、エネルギーに満ち溢れる命の音です。この歌の歌詞は正しくそれを表現していると思います。しかし、この歌詞は日本語です。ヨーロッパのお客さんにはたぶん何て歌っているのか分からないでしょう。だから、どれだけ本当にそう心に思いながら歌うかなのです。本当に「生きている」と強く思いながら歌えば、それが言葉としてではなくても、お客さんに伝わるはずです。歌詞を歌っているというより、心で歌うのです。魂棒を振り回し、私達は高鳴る鼓動を感じながら歌います。そしてお客さんにも自分の鼓動を感じながら聞いてもらいたいのです。

 
9月23日  Bregenz最終日
「雷音組曲」にて。4尺の大太鼓演奏シーン。

「千秋楽」

2007年EUツアー、千秋楽を迎えました!!
今年もいろんな国、街へ行かせて頂き、たくさんのお客さんが私達のコンサートに足を運んで下さいました。

2月、スロバキアのブラティスラバから心音ツアーは始まりました。
一発目はドでかいスポーツアリーナで5000人を超える物凄い歓声に、まるでスーパースターになったような気分を味わわせて頂きました。 その後は寒い寒い東ヨーロッパのチェコへ。ハンガリーでは一週間の間に7回公演をし、リトアニア、ラトビア、エストニアのバルト三国へ。

3月は極寒の地ロシアに入りました。その後はルクセンブルク、フランスで単発の公演があり、そしてオランダです。ほぼ毎日乗り打ちだったオランダツアー、バンガローから毎日違う劇場へ行かせて頂きました。

約2か月間のバンガロー生活の後、5月後半は再び東ヨーロッパはポーランドへ。ポーランドはほとんどがアリーナでの公演でした。6月のはじめ1週間はドイツの山でホリデーを過ごさせて頂き、ホリデー後にはドイツのテレビに生出演しました。そしてルーマニアの首都ブカレストで公演をしました。 余談ですが、私はここでパスポートの増補をさせて頂きました。おかげ様でパスポートのページもスタンプでいっぱいです。

さて、その後はギリシャでした。ギリシャと言ったら野外公演!たくさんのお客さんと星の下、時々吹く風がとても気持ち良く、感動的でした。暑い暑いギリシャの次はヨーグルトの国ブルガリアへ。その後はオーストリアのグラーツで約1週間の合宿と1週間の公演。合宿中、騒音という爆音でご近所に大変ご迷惑をおかけし、Zecファミリーにはバーベキューにまで招待して頂きました。そしてドイツのスチュッツガルトで1週間の公演をし、一時帰国です。真夏の日本は暑かった!!日本では子供太鼓教室の合宿、学校公演、アメリカツアーの梱包、出荷作業、我らの魂源堂での練習と、とても充実した日々を過ごさせて頂きました。

そして8月8日、ツアー再会!その一発目は、オーストリアの川に浮かぶステージでの公演でした。夜の仕込み、大雨の中でのバミリが印象的でした。その後はスウェーデンのストックホルム。ここでは大きなフェスティバルに参加させて頂きました。すっごい数のお客さんにめちゃめちゃ興奮しました。その後は劇場の壁にとてつもなく大きいポスターが飾られてあったスイスのバーゼルで1週間の公演、その次はドイツのフランクフルトの由緒正しい劇場Alte Operで5日間7回公演、何と完売。その次は同じくドイツのBraunschweigという初めての街で2回公演をし、ミュンヘンのサーカスクローンへ。ここでは10日間12回の公演をしました。そしてヨーロッパツアー最終地、オーストリアはブレゲンツで1週間の公演をし、今日千秋楽を迎えました。

かなりかいつまんで書かせて頂きましたが、このレポートの行間にたくさんの出来事を感じて頂けたらうれしいです。とにかく私達が一番思うことは、たくさんの人への感謝の気持ちです。いつでも私達のそばには誰かがいて、その誰かのおかげで今の私達があり、「倭」があると思っています。この感謝の気持ちを表現するのは、やはりこれからもっと私達が心身共にパワーアップし、より良いコンサートをすることだと思います。

ツアーレポートをご覧の皆様、「倭」を応援して下さっている皆様いつもありがとうございます。これからもどうぞよろしくおねがいします。

では、明日日本へ帰ります!
アメリカツアーレポートでまたお会いしましょう!!

 
9月26日  出国

メキシコ、モントレー空港で発見!ここではフェスティバルに参加します。

「USAツアースタート」

ツアーレポートをご覧の皆さんこんにちは。
私達は今メキシコに来ています。3日前の23日にヨーロッパツアーを終え、24日にヨーロッパを出、25日に日本へ着き、その次の日、今日ですがメキシコへ飛び立ちました。日本へは帰ったというより、トランジットで立ち寄ったと言ったほうが正解かもしれません。
まあ案の定、荷物は来ておらず、前回のツアーで使用した衣装をとりあえず持って、再び機上の人に。で、メキシコ到着。メキシコまでは2回の乗り継ぎがあり、本日は都合3回飛行機に乗ったので足がパンパンにふくれております。問題の荷物はというと、こっちの今日の夕方、日本で言うと27日の朝に関空に着いたそうです。それらは第2便で出国するメンバーと一緒に明日の夜にメキシコに着く予定です。

 
9月27日  仕込み

フォーカス中です。ステージからは建ち並ぶビルと、その向こうには山々が見えます。屋根の上に見える人影は大久保哲朗です。

「灼熱のメキシコ」

先日までいたオーストリアは寒く、日本に帰ったら残暑で蒸し暑く、出国後トランジットのアメリカは肌寒く、着いたメキシコはまた暑く、朝目覚めたら冷房のききすぎにくしゃみ連発・・・。いつも通りランニングで外へ出ると空気がモワっと生暖かく、いったいここはどこなのだと一瞬わからなくなってしまいました。

そうです、ここはメキシコです。「倭」3回目のメキシコです。今回は、「Forum universal de las culturas Monterrey 2007」というフェスティバルに参加します。今日はその仕込み日でした。私達が演奏するのは、街のミュージアムのまん前に作られた野外ステージです。舞台に照明が吊るされ、サブステージ作りから始まりました。いつも劇場へ入れば既に舞台が出来上がっているヨーロッパとは違い、USAツアーは舞台の仕込みからさせて頂けるのです。特に新人メンバーにとっては慣れない作業だらけ。熱い陽射しと高い気温に、みんな汗だくで体を動かしました。サブステージが出来た頃は、ちょうど一番陽が高い時間帯だったため、アンパックはせずに一旦夕食休憩に。ちょっと涼しくなってきた頃から作業再開です。私達が太鼓のアンパックを始めると、ステージ前にはたくさんの人が集まってきました。何かが始まると思ったお客さんたちの拍手と声援を受けながら、バミリ、フォーカスは進められました。
それにしてもメキシコは暑いです。9月後半にして、白くなりかけてきた肌もまたまた小麦色に戻りそうです。

 
9月28日  フェスティバル演奏

「楽打」です。遠くのお客さんに向かってより激しく!!

「メキシコはいつも雨」

私が始めてツアーに参加させて頂いたのは、3年前のメキシコツアーでした。その時はまだ「倭」のこともツアーのことも何も知らず、わからず、できずでただ毎日みんなについて行くことで精一杯でした。そのメキシコツアーで印象深かったのは、第一発目だった闘牛場での公演でした。なぜかと言うと、以前、ツアーレポートで書かせて頂いたことがあるのですが、その時私は「倭」に入って初めて楽譜をもらい、初めて太鼓を打たせてもらってめちゃめちゃ嬉しかったのです。そしてもう1つの理由は、その日の公演は大雨だったのです。開演直前に降り始めた雨はどんどん強くなり、闘牛場の野外ステージはみるみるうちに水浸しに。太鼓を打てば水しぶきが上がり、「楽打」では桶胴を担いで動きまくるメンバーは滑ってこけまくりで、大盛り上がりでした。前置きが長くなりましたが、今日はメキシコでの一発目の公演でした。そして、今日も雨が降ったのです。雨の心配はいらないと言われていましたし、全然降りそうな気配もありませんでしたが、本番直前に降り始めたのです。雨は一旦強くなりましたが、よりいっそう気合いの入った「輩」の後には止み、無事に最後までコンサートをやり終えることができました。野外公演は劇場よりもはるかにハプニングやアクシデントが起こり得ます。それにその都度対応していくのが醍醐味なのです。

 
9月29日  フェスティバル演奏2日目

物凄い人、人、人!ずーっと向こうまでいっぱいです。

「1万5000!」

聞いて驚きました。なんと昨日の観客動員数、1万2000人だったそうです!舞台上からは近くのお客さんまでしかあまり見えませんでしたが、アンコールで客電が付いた時には遠くの遠くまで人でいっぱいなのがわかり、鳥肌が立ちました。あんなに遠くのお客さんまで私達の太鼓の音、声、エネルギーは届いていたのでしょうか。

今日はまず、とにかく前へ前へ向かっての「楽打」を練習しました。前を見て演奏したり、声を出したりしていても、どうしても自分の中に向かっていたり、舞台上のメンバー間だけのコミュニケーションになりがちです。そんなんでは、ずーっと遠くからも見てくれているお客さんには何も届きません。クライマックスの盛り上がりの部分を何度も練習しました。声を無理矢理大きく出したり、大きい音をならすことではなく、ずーっと遠くのお客さんを本当にちゃんと自分の目で見ているかが大事だと思いました。さて、昨日の公演のことがいくつかの新聞に載せられ、その効果もあり、開演時間の2時間も前からもうお客さんは集まり始めました。同時に雲行きも怪しくなってき、開演直前に今日も雨が降り始めました。
しかし、そんなことはお客さんにはあまり関係ないようです。昨日より更にお客さんは増え、本日はなんと1万5000人だったそうです!明日香村の人口の2倍以上ではありませんか。すごい・・・。雨も途中で止みました。コンサートが終わってからもお客さんはなかなか帰らず、普段にはない黄色い声援を受け、ちょっと照れるメンバー達でした。

 
9月30日  Day off

ドラムセットのゲームに挑戦する増井隆興。なかなか上手でした。

「けじめ」

気付けば今日で9月も終わりです。
今月は、ヨーロッパツアーの終わりとUSAツアーの始まりがあり、とても大事な月だったと感じます。一つの大きな節目。気持ちの切り替え、臨機応変な対応が必要だと思いますが、どちらもあまり得意ではない私達。しかし、とにかくけじめだけでもしっかりしたいと考えて頑張っています。
さて、今日のオフは午前中にびっしり練習。そして、なーんと!午後は遊ばせて頂きましたー!
練習内容はアメリカでの学校公演のためのものです。本公演とはプログラムもポジションもいくつか変わります。やったことのないポジションを与えられることもよくあり、かなりやりがいがあります。そして午後は街へ出ました。お昼ご飯を食べた後にちょっとぶらぶらし、ある建物に入ってみると、そこにはゲーセンが!学生時代を思い出し、みんなで入っていきました。驚いたことに、そこにあったゲームのほとんどは日本のものだったのです。しかも説明などが全て日本語で書かれたままでした。まさかこんなところで日本を感じられるとは思ってもいなかったので、しばしツアー中であることを忘れはしゃいでしまったのでした。