8月8日  出国

出発前、魂源堂の玄関にて。佐原さんのバスと大久保哲朗。

「再びEUへ」

ツアーレポートをご覧のみなさん、お久しぶりです。
7月17日に一時帰国をし、約3週間の日本滞在を経て再びヨーロッパツアーへと戻って参りました。

久しぶりの真夏の日本では、子供太鼓教室の合宿、アメリカツアーに向けての梱包作業と集荷、和歌山での学校公演、そしてツアーの練習と、とても充実した日々を過ごさせて頂きました。なんと言ってもお祭りシーズンだったこの時期、夜に車の窓から花火大会の打ち上げ花火が見え、日本にいることがとても嬉しく思いました。さて、ちょっとお祭り気分も味わえ、今日からは気持ちをまたツアーモードに切り替えです。今日はお馴染み関西国際空港からアムステルダムへ飛び、そこで乗り換えてオーストリアのウイーンへ。久しぶりのヨーロッパ、只今午前3時30分。もろ時差ぼけです。早くこの時差ぼけから抜け出し、万全の体調で公演を迎えたいと思います。では、おやすみなさい。

 
8月9日  仕込み

舞台の前面には大分雨が吹き込んでいます。台のみでフォーカス中。

「雨の中でのバミリ」

今日は、明日から始まる公演の為の仕込み。夜には私達もバミリをしに行きました。夜の仕込みというとギリシャでの野外公演を思い出します。そう、ここでも私達は野外公演をするのです。しかも、なんと川の上に浮いている舞台で。去年、湖に浮かぶステージでコンサートをしたことがありましたが、川は初めての体験です。船酔いと、流れていってしまわないかが心配でしたが、思っていたよりも揺れも少ないようなので安心です。

さて、約3週間ぶりのアンパックとバミリが始まった、と同時に雲行きが怪しくなってきました。急に空は暗くなり、雨が降りだしてきたではないですか。屋根があるとは言え、舞台前から雨が吹き込んでくる為、太鼓はできるだけ後ろへ下げ、台のみでバミリとフォーカスをすることになりました。雨はどんどん大降りになり、風も強くなっていきました。雨と強風のせいで、8月だというのにとても寒い1日でした。
雨の中、なんとか太鼓なしのバミリは終了。太鼓、台等を舞台後ろに集めてシートで覆い、今日の作業は終わりました。

 
8月10日  Tulln公演

川に浮かぶステージ。結構これが揺れるんです。ただいま「我楽多」の練習中です。

「川上コンサート」

空は曇り。かろうじて雨は降っていませんが、天気予報では雨です。今日公演をする舞台は川に浮かぶ野外ステージなので、天候によってプログラムを変更する可能性があるということで、いろんな対策が考えられました。ピッカーンと晴れて100%雨は降らないだろうという場合は通常の2時間コンサート。雨が降ってたり、降りそうな場合は休憩なしの90分バージョン、そしてどしゃ降りの場合は45分バージョン。90分バージョンはギリシャで経験しましたが、この45分バージョンというのは初めてのことで、どの曲を入れるかというところから話し合われました。 天気がどう転んでも対応できるよう、この3パターンを基にセッティングや流れを確認し、川に浮かぶ舞台へと行きました。

さて、今日は約3週間ぶりの公演です。仕込みは昨日の夜に済ませ、今日は桶胴太鼓と締め太鼓を締めるところから始まりました。久しぶりに会った太鼓達。太鼓のエネルギーでしょうか、気付くと空は明るく、天気が良くなってきていました。その後はいつもの様にサウンドチェック、練習、そして開演準備。問題の天気はというと、ピッカーンとまではいきませんが崩れることなく本番を迎えられそう。ミーティングで、2時間の通常コンサートをするという決断が下されました。空のまだ明るいうちにコンサートはスタートです。お客さんからも私達からもお互いが見えての演奏でした。二部が始まる頃にはすっかり暗くなり、風も出てきて肌寒くなってきましたが、それでも雨は降ることなく無事にコンサートを最後までやりきることができました。

 
8月11日  Tulln公演2日目

太鼓好きのお兄さん。たくさん並べてナイスドラミングを披露。

「再会」

雨の音でいつもより早く目が覚めました。天気予報の通り、雨が降っていたのです。舞台上に集めてシートで覆っている太鼓達を心配しながら、今日は45分バージョンか、90分バージョンになるのかと一瞬考えました。でもそんな心配は無用のようです。朝のランニングの時間にはいつの間にか雨は止んでいました。このまま降らないことを願い、会場へ。舞台上には昨日の夜から降っていただろう雨がかなり吹き込んでいて、床に所々水溜りができていました。心配していた太鼓達は、幸い濡れてはいませんでしたが、かなり湿っぽくなっていました。すぐにシートをはずし、乾燥させます。そしてそく練習です。

さて、今日は私達にお客さんが来てくれました。
6月にグラーツで合宿をしていた時に、毎日騒音で迷惑をかけていた私達にとても親切にして下さったZecファミリーのお兄さんとフィアンセが遊びに来てくれたのです。川岸に彼らを見つけた時はとても懐かしく、しかしつい最近まで一緒にいたような感じがしました。とにかくまた会えて嬉しかったです。

いろんな国や街でいろんな出会いがあってその時その時に感動がありますが、それがその場限りや思い出として終わってしまうのは寂しかったりします。こうして、時が過ぎても忘れることなく、会ったらまたその時のように話したりできることはとても嬉しいものです。そしてまた会いたいと思います。私達のほうもそういう存在になりたいものです。素敵な再会で更に元気が出ました。今日もいいコンサートをしたいと心から思いました。雨は降ってきません。今日も2時間コンサート決定です。昨日に比べると風がちょっと強かったけれど、最後まで無事に演奏しきることができました。
コンサートが終わり、撤収作業をしている時にスタッフが、「君たちが晴れにしたんだよ」と言ってくれました。

 
8月12日  Day off

サーモンの鉄板焼きを注文。湯気といい匂いが立ち込めています。

「Film Festivalでランチ」

今、ウィーンでは「Film Festival」というお祭りが開催されています。私達が滞在しているホテルのすぐ近くの公園に巨大スクリーンがあって、夜にそこで映画が上映されたり、その広場でオペラやダンスやコンサートが毎日日替わりであるそうです。お昼にそこへ行ってみました。催し物は何もありませんでしたが、そこにはいろんな国のレストランが出店していて、いろんないい匂いが立ち込めていました。ソーセージといろんな種類のビール、中華、インド料理、ギリシャ料理、パエリヤ、ハンバーガー、パスタ、ウィーン名物ザッハ・トルテもありました。とにかくたくさんあってしかもどれもおいしそうでかなり迷いました。これは1つには決められないと、いろんな種類を取ってみんなで食べようということになり、中華の焼きそば、日本の国旗があったけど日本人ではないコックさんの鉄板焼き、パエリヤ、そしてソーセージを食べました。おなかも心も満たされすぎて、名物のザッハ・トルテは食べれませんでした。

 
8月13日  移動日

ウィーンとお別れの今日はいちだんと天気が良く、街がとてもきれいでした。

「スウェーデンへ」

EU後半戦2つ目の都市、スウェーデンはストックホルムへやって参りました。スウェーデンには9年前に来て以来、今回で2回目となります。北欧というだけあって、8月だというのに肌寒く、スーツケースから半年ぶりにジャケットが登場しました。ストックホルムの空港に着いたのは夜の9時、まだ空は明るく、ちょうど夕焼けがきれいな時間でした。さて、明日からは通常のコンサートではなく、ストックホルムで開かれるフェスティバルやイベントでの演奏があります。明日がどんなイベントか、どんなシチュエーションかはよくわかりませんが、どんな時でも生きた演奏をしたいものです。

 
8月14日  イベント演奏

街中に貼られているポスターは、なんと大久保哲朗がモデルに!!

「Festival Opening Party」

ストックホルム1日目の朝は、いつものようにランニングから始まりました。1日目はホテルの周辺探索も兼ねていることが多く、初めての街(倭は2回目ですが、私達若手は皆始めてなのです)でのランニングはとても楽しみです。ホテルの周辺はショッピング街で、日中はとてもにぎやか。少し走ると大きな橋があり、そこを渡るとオールドシティと呼ばれる島がありました。その街は旧市街独特のレトロな雰囲気が溢れていて、朝から観光客がたくさんいらっしゃいました。今日からストックホルムでは「Cultural Festival of Stockholm」が開かれ、私達は明日の夜にそのお祭りに参加します。今日はそのオープニングパーティーで演奏させて頂きました。このお祭りは、オペラハウスの前の広場に特設ステージが組まれ、その前の道路が閉鎖されてメイン会場となります。今日は黒人と白人のレゲエバンドがコンサートをしていました。みーんな歌って踊っていました。

 
8月15日  イベント演奏

アンコールでハイハイハーーーーイ!!

「Culture Festival」


今日私達はこのフェスティバルに出演です。午前中は、通行人と車がビュンビュン行き交うオペラハウス前の特設ステージでアンパック、バミリ、サウンドチェックを道行く人たちに大公開させて頂きました。本番は夜の10時半からで、本日のトリを飾らせて頂くとのこと。責任重大!空がだんだん暗くなってきた夜の8時頃、パラパラと雨が降り出してきました。特設ステージの前のたくさんのお客さんも傘をさして立っています。帰ってしまわれないことを祈りながら、どしゃぶりになった場合の作戦が話し合われました。しかーし!運の良いことに私達の出番直前に雨が止んだのです。そのおかげもあり、お客さんはどんどん増え、私達を待つ手拍子と歓声はまるでロックコンサートのようです。

さあ、いざ舞台上へ。
YAKARAの1発目を打った後、顔を上げてびっくりしました。目の前の広場は、びっしりとずーっと遠くまで人、人、人!ステージの幅を遥越え、どこまで広がっているのかわからないほどの観客、その数なんと、6000人以上。この景色、舞台の上から写真を撮りたかったー!

 
8月16日  レセプション演奏

これが今日の「楽打」でした。王様はもう少し後ろの円卓におられました。

「王様」

さて、大興奮のコンサートから一夜明け、今日はストックホルムで開かれた「Stockholm Water Prize」というレセプションに出演しました。このレセプションにはなんとスウェーデンの王様も出席しておられたのでした。だだっ広ーいホールにたくさんテーブルが並べられ、いかにも一般のお人ではなさそうな方々が座っておられ、その中に王様と(たぶん)女王様もいらっしゃいました。建物ももちろん立派でロイヤルな感じです。2階から階段で下りてきて、踊り場と階段を使って「楽打」を演奏させて頂きました。演奏場所、見ておられる方々の雰囲気も含め、こんなシチュエーションでの演奏は滅多にないことです。なんだかめちゃめちゃ緊張しました。後で聞くと、王様は小さい頃から太鼓好きだそうです。きちんとお会いすることはできませんでしたが、帰りにすれ違いざまに「良かったよ」と言って下さった王様でした。

 
8月17日  Day off

大久保哲朗コレクションからの一枚。髪を振り乱しながら三味線を弾く東沙織。

「情熱的に」

今日は大きな公園で三味線、チャッパなど鳴り物の練習をさせて頂きました。三味線はいつも休みの日はホテルの部屋でミュートをして練習していましたが、今日は外で思いっきり練習できてめちゃめちゃ気持ち良かったです。天気も良く、最高でした。この青空のさわやかさに思わずカメラを手にした大久保哲朗は、練習する私達の周りでしゃがんだり傾いたり寝ころんだり、私達以上に動きながら写真を撮りまくり、しまいにはバッテリーが切れました。撮った写真をチェックする度大久保哲朗は、「情熱的な写真が撮れた」と満足気に見せてくれました。「情熱や!」と言いながら(たぶん自分に)近くでシャッターを押され、あおられた私達の練習もより激しくなっていきました。一曲弾き終わった時、ものすごくスカッと気分が晴れたような気がしました。それはこの青空と、情熱的になれたおかげだと思いました。

 
8月18日  Day off

朝のランニング中。海を見て思わず飛び込んでしまった「倭」の男達。スウェーデンの海はさすがに冷たかったらしいです。

「チャッパと女の子」

ストックホルムでのお休み2日目。今日は、肌寒くて天気のはっきりしない1日でした。お昼ご飯の後に川岸のいい場所を探し求めて歩き、そこでバチを削っていると雨が降り始めました。そいで、急いで片付けて帰ろうとしたら急に晴れてきました。ホテルに一旦帰ってから、次は練習だ!といつもの公園にチャッパや三味線を持って出て行ったらまた雨が降ってきました。今日はついてないなー、と言いながら、楽器を使わない練習をすることにしようと話していると雨は止みました。変な天気・・・。

まあ、それでも雨はやんだのだから、ということで、大久保哲朗、増井隆興、日高元の「我楽多」組はチャッパの練習をしに公園へ。公園には小さな子供のいる家族連れや、スピーカーを置いて何やらレゲエのような音楽を流している人達や、小さなコンロでミニバーベキューをしている人達など、いろんな人がいろんな休日の過ごし方をしていました。その中で素振り、口唱歌、チャッパの練習をする私達。不思議な光景でした。

私達の近くを横切る人は、みな少し立ち止まってチャッパを不思議そうに見て行かれました。その中でも、とても興味を持ったらしい4歳くらいの女の子がいました。大久保哲朗がチャッパを差し出すと、最初は逃げていましたが、その子のお母さんがチャッパを持つと安心したらしく、チャッパの音に合わせて踊ったりして、めちゃめちゃかわいかったです。はっきりしない天気にすっきりしない気分が晴れわたる、そんな心が和んだ瞬間でした。

 
8月19日  移動日

バニティセットの中身を吟味する土肥舞子。 後ろにいるのがデニスです。

「トラブル」

楽しかったストックホルム・カルチャーフェスティバルも昨日で終了。街のあちこちで解体作業が行なわれている中、早くも次のイベントが開催されていました。ショッピングストリートでの古本マーケットです。テーブルがストリートの端から端までずーっと連なり、ビッシリと本が並べられていました。そのテーブル長さ、なんとー、世界一だそうです。世界一なら日本の本も売ってあるのではと思い、人垣をかき分けちょっと探してみました。しかしすんごい量の本と、それを取り囲むすんごい人波に1分も経たないうちに諦めてしまいました。

さて、今日はそんなストックホルムとお別れをし、スイスのバーゼルへ移動です。コペンハーゲンで乗り換え、バーゼルの空港へ着いたのは夜の10時。ここで毎度おなじみのトラブル発生です。なんと、預けていたスーツケースの「倭」4人分とクルー3人分が待てど暮らせど出てこないではありませんか。
そう言えば乗り込む時に「この小さい飛行機に全部入るのか?」と言っていたのを思い出しました。「積めないんだったら言ってよ!」「あー、スーツケースがないと何もできない!」「洗濯物半乾きなのに!」など、口々に文句の嵐・・・。しかも今回の移動では、先日イベント出演があったのでスーツケースに衣装も入っているのです。怒りは増すばかり。そこへ何やらたくさんポーチを持ったデニス(ツアーマネージャー)が。それは荷物が届かなかったお詫びに航空会社からのプレゼント、バニティセットでした。そいて現金な私たち。つい今しがたまでブーブー言っていたメンバーの顔色はコロッと変わり、そのセットの充実さに大喜びなのでした。幸い明日は公演がなく、11時頃に荷物は届くということ。なんだか逆に得した気分の私たちでした。

 
8月20日  Day off

窓ガラスに映る自分に向かって素振り。私に迫力はあるのか!

「明日から」

朝起きて、さあ着替えよう、として、スーツケースがないことに気付きました。なんやかんやするたんびに、スーツケースがないことを思い出し、その度に「ハァー」とため息の連続でした。練習するにもジャージもありません。しかたなく、朝のランニングはジーパンに革靴でウォーキング。雨上がりの道は巨大なナメクジでいっぱいです。踏まないようにとよけながら歩いたので、あまり歩き方の練習にはなりませんでした。

朝食後に練習しに外へ行こうとしてもバチがないことに再び「ハァー・・・」。練習してみると、なんてジーパンて動きづらいのでしょう。ジーパン組みは動くのをあきらめ、手合わせをさせて頂きました。
待望のスーツケースと再会できたのは、結局午後の3時頃でした。私達は早速ジャージに着替え、練習再開です。明日から6日間連続公演が始まるのです。2時間の通常公演というのも実は結構久しぶりなのです。バチを振る腕にも自然と力が入るのでした。

 
8月21日  Basel公演1日目

舞台セットの竹と御簾も久しぶりに登場です。

「自然に」

Basel公演初日。手に手にパスポートを持って車に乗り込みました。今日から公演をするのはスイスのBaselという街ですが、私達はお隣のドイツのホテルに泊まっています。毎日国境を越えて公演をしに行くのです。ですからパスポートは必需品。Baselはスイスとドイツとフランスと隣接していて、ランニングでちょっと走るとフランスとの国境も見えました。さて、今日から6日間連続8回の公演が始まります。久しぶりの2時間、舞台セットも通常のプラン、舞台も客席も広い完璧な劇場です。

野外公演やイベントが続いていた私達。その時とはまた違う雰囲気を感じて演奏することはできたでしょうか。劇場に見に来られたみなさんとのコミュニケーションはとれたでしょうか。今の私達の最大の弱点でもある、臨機応変のコミュニケーション。相手に合わせてのリアクション、こう来たらこう出るとか、ボケられたらつっこむとか、自然に無理なく違和感なくできるようになりたいものです。

 
8月22日  Basel公演2日目

最後は全員で「セイヤーーーーー!!!」

「ワークショップ」

今日は午後からワークショップ。Baselのお客さんと一緒に太鼓を打ちました。参加者の中に体の大きな男性2人組みがたのですが、その人達は、見た目とは違って小さな男の子のように見えました。リズムや振り付けなどワークショップの内容が1つ1つ進む度に2人で顔を見合わせて笑ったり、自分たちで工夫して練習してみたりと、本当におもしろそうでした。そういう光景を見ると、太鼓は人を夢中にさせる、すごい力を持っているんだと改めて思います。その男性達に限らず、ワークショップに参加して下さった人達はみな、一生懸命に力一杯打ち込んでいました。初めての人ともすぐに仲良くなれる楽器。そんな素敵な楽器と一緒に、私達は世界のあちこちを回っているんだ。みんなに負けないように、私達が真剣に、そして太鼓に夢中でありたいと思いました。

 
8月23日  Basel公演3日目

今日は公演後にベトナム料理を食べに行きました。みんなの大好きなフォーが来たとこで1枚。

「声」

今日の練習は、舞台の前から客席に向かって叫びました。今日の目標、自分のやりたいこと、思っていること。とにかく思いっきり声を出し、叫びました。自分の中のものを全て吐き出そうとしました。だんだんとおなかの中から熱いものが込み上げて来るのがわかりました。おなかから外へ出しているそれは、そのまま自分自身に返ってきました。本当に自分は今日それをやるのか、そう生きるのか、自分の言っていることは自分に返ってきました。自分に問いかけるように、隣の人と小さくその目標を言い合いました。

1年中コンサートツアー。毎日公演があると、毎日同じことを繰り返しているような気がしてきます。私は自分を確かめます。なれ合いにならないように、毎日また新しい気持ちで舞台に向かう為に。

 
8月24日  Basel公演4日目

思わず記念写真を撮りました。

「国境」

今日も朝のランニングから1日がスタート。先頭は東沙織。行ってみたい所があると言い、みんなは後ろをついて行きました。少し走ると、2年前に泊まったホテルに着きました。その近くには大きな川があって、2年前にはなかった橋がかかっていました。東沙織はその橋を渡りたかったそうです。こんな橋なかったなという会話をしながら大きな橋の上を走っていると、向こう岸にフランスの国旗が見えました。橋を渡るとそこはフランスだったのです。その大きな川がドイツとフランスの国境だったのです。川を挟んだ向こう岸は標識はもちろんフランス語だし、建物の雰囲気もドイツ側と全然違いました。パスポートを持たずに走っていることに気付き、ちょっとドキドキしながら国旗の横を通過しました。ホテルのあるドイツ、ランニングでフランスへ、そしてスイスで公演。今日は1日で3か国に足を踏み入れたのでした。

 
8月25日  Basel公演5日目

マチネイと夜の公演のほんのわずかな時間も練習です。「烈火」を練習する日高元。

「懐かしい」

週末の恒例となりました、マチネがやって参りました。今日のマチネもお客さんには子どもが多く、特に「烈火」やアンコールではかわいい笑い声が聞こえました。さて、そのマチネが終わりバックステージに帰ると一人のお客さんが私達を待っていました。その方はなんと3年前のメキシコツアーで通訳をして下さった方のお母さんだったのです。

3年前のメキシコツアーは、私が「倭」に入ってすぐに連れて行ってもらった初めてのツアー。その時は「倭」の舞台のこともツアーというものも全然知らず、毎日みんなについて行くだけで精一杯だったなあ・・・ってメキシコの話になるたびに思い出します。そのツアー中に通訳として来て下さっていたとてもかわいらしいナナさんという方のお母さんが今日のコンサートに来て下さっていたのです。「ナナ」という名前を聞き、すぐにみんなが「あー!」と思い出されるほど、ナナさんのことは印象深かったようです。そして今日はそのナナさんの誕生日で、お母さんは私達におめでとうを言ってほしくて、わざわざ無理を言ってバックステージに入れてもらったとおっしゃるではありませんか。娘さんの誕生日に私達のおめでとうのメッセージを選んでくれるなんて、なんと言っていいのやら、こっちがとにかくうれしかったです。公演直後でテンションも高い私達。久しぶりに倭特製ハッピーバースデーの歌を、なんと電話の向こう、メキシコにいるナナさんに心を込めて歌わせて頂きました。

 
8月26日  Basel最終日

大きなポスターにありがとうの気持ちを込めてサイン。

「さよならバーゼル」

6日間8回公演は、あっという間でした。
最終日はマチネ、夜の公演、そして撤収作業のフルコース。全てが終わった時は、一週間の公演の疲れがドッとくるというより、何かすっきりとした達成感のようなものがありました。国境を越えての劇場入りも今日で終わりです。ボーダーでパスポートチェックがあり、長いこと待たされた日もありました。ちょっとおっちょこちょいなツアーマネージャーがホテルにパスポートを忘れ、引き返したこともありました。(しかも2日連続・・・。)パスポートなしでドキドキしながらフランスに入ったランニング。この街では国境についてだけでも思い出がたくさんできました。

 
8月27日  移動日

アルテ・オパーにて記念撮影。向かって左側には大きな倭ポスターが!(見えますか?)

「Frankfurtへ」

今日は久しぶりのバス移動でFrankfurtへやって来ました。Frankfurtはドイツ屈指の大都会です。めちゃめちゃ高いビルが建ち並んでいます。そしてFrankfurtと言ったらアルテ・オパー(Alte Oper)です。Alte Operとはとても有名で由緒正しいオペラ劇場。その建物はいかにもそれらしく、美しく、荘厳な雰囲気の建物です。ポストカードにもなっているほどの立派さです。「倭」がその劇場で公演をするのは今年で3回目となります。しかし今回、初めてだという若手がなんと4人もいました。私は2回目ですが、初めての時はそのすごさがわからず、そして自分がここで公演をするという実感がわかなかったのを覚えています。今日はFrankfurtに着いてからまずそのAlte Operを見に行きました。明後日から5日間、ここで公演をすると考えるといてもたってもいられなくなり、ホテルへ戻って練習を始めた私達でした。

 
8月28日  Day off

3分間耐久腹筋。これが結構きくんです。

「ジャンキー公園で」

私達がFrankfurtへ来るといつもトレーニングや練習をする公園があります。その名はジャンキー公園。緑が多く、きれいで大きく、なぜかウサギがいっぱいいるその公園は夜になるとジャンキーが集まるという噂なのです。それで私達は勝手にジャンキー公園とよんでいます。今日もそのジャンキー公園で練習をしました。なんせ明日からはAlte Operです。練習とトレーニングにも気合いが入ります。休日を楽しむ家族連れやカップルに不思議な目で見られたり、ポスター見たよと話しかけてくれる人がいたり・・・。いろんな国のいろんな公園で練習をしている私達。人に見られることにも慣れてきて、舞台よりも公園で、一層激しくパフォーマンスすることが快感にさえ覚えてきたほどなのでした。

 
8月29日  Frankfurt公演

開演前に関係者にごあいさつ。

「Alte Oper」

今日私達は朝練をしました。朝練というと、学生の頃の部活動を思い出します。試合が近くなると、まだ空が薄暗い中、始発電車に乗って学校へ行き、朝練をよくしていました。懐かしい思い出ですが、今思うと、その朝練は単に技術向上の為だった訳ではなかったような気がします。

今日の朝練の目的もそうでした。今日からAlte Operでコンサートをするということにテンションを上げて行きたかったというのが大きいです。その緊張感を感じあうための訓練です。新しいプログラムで、新しいメンバーもいます。大きな、有名な劇場です。私が前回初めてここにきて学んだことを、後輩達に教えられることはあるはずです。

 
8月30日  Frankfurt公演2日目

これがAlte Operの客席です。ここに向かって毎日叫ぶことから始めています。

「声出し」

今日の練習も「声出し」から始まりました。この声出しというのは、単に声を出す練習ではありません。今日、この声出しを提案してくれた代表の小川正晃からメッセージをもらいました。声が枯れるくらい出せ、言葉が出なくなっても何か言いたいことがあるならそれは伝わるはずだと書いてありました。

本当に言いたいことは言葉で伝えるものじゃない。声で伝わるものではないのだと思います。私は、言いたい事をひたすら叫んでいるうちに、声以外のものが体から出てきているように感じはじめています。それが涙になる時もあります。
きれいな声を出すこと、大きな声を出すことが今の私に必要なのではなく、自分の中身を表に出し、そしてそれを自分でも知ること、身近な人にも知ってもらうことが大事なのだと感じています。

 
8月31日  Frankfurt公演3日目

杉山味里と向井大樹の「雷音組曲」10セット!

「夏の終わり」

気付けば今日で8月も終わり。ほんとに時間が経つのは早いです。
8月が終わって9月に入るこの瞬間は、夏から秋に切り替る瞬間。秋、なんとなく寂しい感じの空が増えてくる季節。ちょっと感傷的になる今日この頃です。思い出の夏。夏と言ったら私は祭りでした。夕方になると子供達が担ぐお神輿が家の近くを通る音。そして遠くで太鼓の音。最後には花火の音。いろんな音がにぎやかに通り過ぎて祭りが終わるのを聞いているのが好きでした。そして、やっぱり自分がそこにいることが好きでした。どうしてだかわからないけど、あの人込みが好きでした。普段は人が多いと所を歩くのはしんどいはずなのに、祭りの時に限っては、人と人にもまれながら屋台を見て歩くのが楽しいですよね。そして、人波の中心には太鼓があったような気がします。

太鼓の音はお祭りの音。太鼓の音にワクワクし、全く知らない人同士でも、その日その時ばかりはみんな仲間のようになってしまえる力が祭りにはあると思います。