6月1日(金)  Holiday in Freiburg, Germany

空港で1枚。ポーランドのスタッフとここでお別れでした。

「JUNE」  土肥舞子

6月到来!!日本では梅雨の季節。ヨーロッパはだんだん日差しがキツくなってきています。皆の顔、体も少しずつ焼けてきました。目指せ、小麦肌。
さて、2月に初日を迎えた心音ツアーも、丸4ヶ月経ちました。スロバキアに始まり、スロベニア、チェコ、ハンガリー、リトアニア、ラトビア、エストニア、ロシア、ルクセンブルク、フランス、オランダ、ベルギー、ポーランド、既に13ヶ国まわっています。

ちょっとここで、この4ヶ月を振り返ってみましょう。東ヨーロッパでは、アリーナの会場が多く、連日何千人というお客さんの前で演奏させて頂きました。長時間のバス移動も多く、舞台上の問題も多々ありましたが、そんなことはなんのその。たくさんのお客さんが足を運んで下さる事を思うと、へっちゃらです。(死語?) フランスでは、劇場入りをしたらまだ劇場が出来ていなかったということがありました。舞台、ホワイエ、楽屋、全てが未完成。これはドッキリ企画かと思いました。オランダは懐かしのバンガロー生活。ツアー中に、一時でも帰る家がある生活というのは、心が和みます。自炊が出来るという所も、かなりのポイントでした。また、この期間には、日本からメンバーの家族の方が来て下さいました。総勢20人を越える食事は、とても賑やかで楽しいものでした。色々な事がおきながら、たくさんの方に応援して頂きながら、ツアー生活はすぎていきます。

そしてそして今日から1週間。私達はドイツのFreiburgという町でアパートに滞在します。公演はありません。つかの間の休憩?いえいえ、充電期間です。練習したいことがたくさんあります。ツアー再開に向け、必ずやパワーアップをします!!

 
6月2日(土)  Holiday in Freiburg, Germany

町の中心にはこの町のシンボル的存在の教会がありました。

「初日」  玉井碧

今日、私達はドイツの南部にあるFreiburgという町までレンタカーを運転してやってきました。今日から約1週間、コンサートがありません。その1週間で私達は身も心も充電し、次のコンサートに向けてパワーアップしたいと考えています。

今回私達が泊まらせて頂いているアパートは、周りに何もないとても静かな所です。場所も広くて練習するにはもってこいの広場がたくさんあります。ここなら他の人に迷惑をかける事なく練習が出来るはずです。
今日は初日ということもあり、荷物の整理や周辺調査で終わってしまいましたが、明日からは気合いを入れて練習です。

 
6月3日(日)  Holiday in Freiburg, Germany

みんな揃っていただきまーす!

「2日目」  杉山味里

Freiburgでの生活2日目、朝はキリに包まれたぶどう畑をかきわける様にしてランニングをし、さわやかな1日の始まりです。朝食のメニューはホットサンドウィッチと、パイナップルの器に入ったイチゴやらキウイ、バナナなど数々のフルーツを細かく刻み生クリームとあえたもの、それを食べやすい大きさにカットされたフランスパンに乗せてほおばるというちょっとオシャレな感じのスタイルでした。アパートのバルコニーにて朝食を頂いたのですが、予想外の寒さにより、皆肩をすぼめ、カタカタ音を立てながら南国風のその朝食を味わっていました。そのアンバランスな朝食のシチュエーションに皆疑問をいだきつつ今日1日をどうつくっていくか考えていました。

バチを削る人、口唱歌をする人、三味線をする人、トレーニングをする人、ぶどう畑に囲まれた周りに何もない静かな所で、場所も広く、迷惑をかけることなく練習が出来るはずと思っていたのもつかの間、三味線の音はもう少しボリュームダウンしてくれとのクレームがきてしまい、仕方なくアパートの外にある小さな遊具を使って腹筋をしていると、今度はその遊具は大人は使わないでくれというクレームがきてしまいました。やる気満々だった私達は思わぬ障害にぶつかったのです。

どうすることもできないので、まずは元気に食べることだ!ということで、夕食にコック玉井碧さん、料理補助二戸末利華さんによって作成されたカレーを頂きました。そのおいしさにはインド人もビックリ(することだと思います)。そのうまさに酔いしれながらとりあえず今日1日の問題点を話合いました。

 
6月4日(月)  Holiday in Freiburg, Germany

気持ちも魂棒も合わせたい!

「練習」  二戸末利華

聞き慣れた目覚まし時計の音が鳴り、まだぼんやりとした頭でいつものように考えます。「何時からランニングだっけ?今日は開演何時だっけ?」布団の中で一瞬の間があり、この約1週間公演がないことに気付きます。そんな寝ぼけた頭もベッドから飛び出すとすぐに、朝のひんやりとした空気でバッチリ目覚めます。

今日もこのさわやかな空気の中をランニングすることから一日がスタートしました。走り始めた時はまだちょっと肌寒かったのですが、心臓破りの坂道ダッシュで汗だくに。アパートに戻る頃には太陽もサンサンと輝いていました。
さてHolidayとは言え、Holidayではありません。朝食を頂いたら早速トレーニングと練習です。昨日、アパートの周辺ではちょっと注意されたので、少し離れた所にある空き地のような場所に行きました。やはり私は青い空とまぶしい太陽の下でするトレーニングが好きです。少しずつ肌が焼けていく感じが好きです。素振り、腹筋、背筋、腕立て伏せなど、通常のメニューやちょっと思考を凝らしたメニューを2チームにわかれて競争を交えながら行ないました。トレーニングの後は練習です。Holiday明けにTV出演を控えています。魂棒を回す雰囲気、タイミング、呼吸を合わせる為に繰り返し練習しました。普段の、劇場という箱の中での練習と比べて、やはり広々とした青空の下ではいつもに増してのびのびとダイナミックに魂棒も回っていたように見えました。

 
6月5日  Holiday in Freiburg, Germany

風が気持ちいい、のどかな道をサイクリング。

 

「心臓やぶり坂道ダッシュ」  大久保哲朗

周りは畑や山ばかりのこのアパートに来てもう四日目になります。この期間中に体がなまってしまわぬよう、私達は毎日トレーニングを欠かせません。最近私達が見つけた新たなトレーニング法があります。それは「心臓やぶりの坂道ダッシュ」です。アパートから500mほど行った所にすんごい傾斜の300mほどの坂道があります。そこを下から上まで一気にダッシュで駆け上がるのです。

文字通り、心臓がバクバク!!
やぶれそうです。走り出すとすぐに足の筋肉が固まり動かなくなります。呼吸が乱れ、口からは情けないヒューヒューという音がこぼれてきます。それでも動かない体を無理矢理動かし、必死に腕を振り登りきるのです。この苦しい時に、脳ミソが「もう限界です!」と言いそうな時に、「いやいや全然まだまだいけるで!!」と逆に脳ミソに指令を出し、もっともっとと足を一歩一歩踏み出すのが好きです。登りきった時にはもう心臓が止まるのではないかと思う程激しくドキドキなっています。自分の心臓の音を耳ではなく体中で感じます。やっぱり心臓ってすごい!数日後にはまた心音ツアーが始まりますが、この心臓の音を表現すべく体をがっしり鍛えていこうと思います。

 
6月6日  Holiday in Freiburg, Germany

練習場所からアパートへの帰り道。みんな大分日焼けしました。

「フレイブルグ」  東沙織

「きっもちいい朝だー!!」一面のぶどう畑に囲まれ、今日も1日がスタート!朝食は連日のサンドウィッチから変わって、今日は雑炊でした。日本をちょっと思い出しました。その後は練習、練習、練習!!!朝も昼も今日は1日中太陽の下で練習です。背中がじりじりと焼けていくのを感じながら、3日後に控えたTV出演の練習は続きました。思いっきり汗をかいた後の晩ご飯は、ハンバーグ。ハンバーグを味わいながら、今日がここでの最後の夜であることをちょっと寂しく思いながら、晩ご飯を頂きました。大自然・練習・食事・・・。素敵な1週間でした。

またまたツアーが始まります!!今日まで溜めた充電パワーを存分に発揮していきたいです。 

 
6月7日  Holiday in Freiburg, Germany

冷蔵庫にあった食材を使いきった、盛り沢山な食卓。和洋折衷、無国籍、様々でした。

「朝食は盛り沢山でした。」  増井隆興

“さよならホリデー”の今朝もベランダから見える景色はすがすがしく、気持ちの良い朝でした。「片付け日」の今日、手始めにキッチンが戦場になります。まずは、おかみさん役の舞子さんにより全ての食材が見事に使われた手料理です。見事に冷蔵庫がカラになります。食後の掃除では「立つ鳥跡を濁さず」の言葉通り、元通りに出来る限り近づけました。どこの誰よりもあなた達の掃除が完璧よ、と言われたような、そんな妄想に気持ち良くなっていた私・・・。 毎日団体であちこち動いていて、周りの人からは“うっとーしい”と思われる事も多いはずの私達、せめて去り際だけでも、と気を配りたいものです。

さて、ドイツのアパート生活も終わりました。素晴らしいロケーションの中、充電完了!みんなの肌は小麦色を通り越し、人種不明も若干名。早くこのたまったエネルギーを使いたい!先ずは明日からのTV出演を成功させたいです!!

 
6月8日  TV rehearsal

衣装を着ての通しリハーサル。みんなすごく緊張してます。

「リハーサル」

今日は、明日出演する「VERSTEHEN SIE SPASS?」というTV番組のリハーサルが一日行なわれました。大きな会場にセットが組まれ、去年の4月に出演した「Wetten dass…???」を思い出しました。今回のこの番組も有名らしく、ヨーロッパのドイツ語圏で放映され、約100万人の人が見るそうです。

私達が出演するのは4分間。今年のツアープログラムから「心音」と「楽打」の一部がピックアップされた特別バージョンを演奏します。午前中に会場へ入り、まずは使用する太鼓をアンパックしました。リハーサルが始まる前には記者会見があり、この番組の出演者や関係者と一緒に代表の小川もテーブルに並びました。リハーサルはサウンドチェック、カメラチェックを兼ねて数回繰り返され、回を重ねるごとに照明やカメラワークが決まっていくのがわかりました。「倭」だけでのリハーサルが終わったらしばらく時間があき、夜には番組の通しリハーサルが行なわれました。このリハーサルはテレビには放送されませんが、お客さんは実際に入っていたので、そういう意味では本番同様でした。1週間のホリデー明けで、お客さんの前での演奏は久しぶりでした。たった4分とはいえ、とても緊張しましたし、ダメ出しももちろんいろいろありましたが、とにかく明日はリハーサルなしの一発勝負です。リハーサルとリハーサルの間にモニターで見た映像を思い出し、イメージトレーニングをして明日に備えたいと思います。

 
6月9日  TVshow出演

「楽打」のクライマックスシーン。

「本番」

いよいよTV出演本番の日がやってきました。昨日、リハーサルとリハーサルの間に、モニターに流れる映像を自分達も見た時に感じたのは、もっと激しくとか大きくという身体の使い方のことよりも、迫りくるカメラのアップに写っている「表情」が気になるということでした。TVは舞台よりも観客の目が近いということは言うまでもないのですが、やはり見えるところは顔、特に目だと思います。その目が何を見つめて演奏しているのか、見ている人に何をどう伝えたいのか、それは誰かを思うことと感情的には似ていると思いました。今回のプログラムの「心音」の持つ意味。力強くエネルギーに満ち溢れ、またお母さんのお腹の中で聞いたはずの、優しくあたたかい音。その2つを、私の目を通して、伝えたいと思いました。

 
6月10日  移動日

駅の改札のようなシステムだったサービスエリアのトイレ。ちょっと戸惑いました。

「ルーマニアへ」

ホリデー、サーカス観賞、そしてテレビ生出演と、短期間のうちにいろんなことがあったフレイブルグから今日は一気にルーマニアへとやって来ました。今日もめっちゃ天気が良く、フランクフルト空港までのバスの中から見た青い空と白い雲がとてつもなくきれいで、そのせいでかえってフレイブルグとのお別れがちょっと寂しく感じました。

さてルーマニア。1、2年前「ノマノマイェーイ♪」の歌が日本でも流行していましたが、覚えていますか?あれはルーマニアの歌だそうです。それと「ルーマニアと言ったらドラキュラらしい」というのが私達にとって数少ない情報でした。そして今の私達にとってルーマニアと言ったら不思議なルーマニア料理です。去年来た時に連れて行ってもらったレストランで頂いたルーマニア料理がとてつもなく印象深く、思い出と言ったらそれしか出てこないと言うほどなのです。今までいろんな国を回らせてもらって、その度にその国や土地の名物料理や食べ物を頂いてきましたが、その中でも最も不思議な料理だったのです。口で言い表すのはまったくもって不可能と言わざるを得ない料理・・・。興味のある方はぜひともルーマニアへ。
さて、今日はホテルに着いたのが夜中だったので、明日、他にも恐るべき名物料理がきっとあると信じて街へ探しに行ってみたいと思います。

 
6月11日  DAY OFF

誰が1番似合ってますか?

「ルーマニアの人々」

今日もルーマニアの街を探索を兼ねたランニングから始まりました。びっくりだったのは、車が本当に多いということです。大通り、小さな通り、路地裏どこも車が列を連なって走っていて、あっちこっち渋滞になっていました。そして何より運転がちょっと乱暴ではないかと思うほど荒く感じました。狭いところでもスピードを出していて、いろんなところで急ブレーキやクラクションの音が聞こえました。更に驚いたのは、歩行者用の信号がないところもあり、車が途切れるのを止まって待っていると、隣に立っていたおばさんはビュンビュン行き交う車も気にせず、道路を横断していったのです。私達の口からは「すげぇ・・・」としか出ませんでした。それが私達には理解できないドライバーと歩行者のあうんの呼吸があるのかと思いますが、ルーマニア人はたくましいなぁと思いました。

さて今日はオフでした。午前中はホテルの近くの公園でトレーニング。日差しが強く、また焼けました。お昼には町の中心のほうへ行ってみました。レストランを探してみましたが、ここ!というのがなかなか決まらず、今日はあまり知らないお店に試しに入ってみようかという勇気もなく、結局お馴染みのマクドナルドへ。しかしここでも珍しいものを発見しました。なんとメニューにりんごがあったのです。始めて見ました。最初は日本のメニューにある、スマイルと同じようなものかとも思いましたが、試しに注文すると、レジの下からサランラップにくるまれたりんごが出てきました。りんごをほおばりながらちょっとブラブラしました。ウィンドーショッピングです。

男性陣は6人、色違いでおそろいのタンクトップを買っていました。6レンジャーだそうです。誰がどの色かというのはあみだくじで決められ、意外な色に当たった人もいましたが、なかなかさわやかでみんな似合っていました。夕方にまた集まり、明後日に控えた公演のために手合わせです。ホテルの部屋の中なので、最初はちょっと小さめにと思ってやっていましたが、やはりだんだん白熱してきてついつい声も膝を打つ音も大きくなってしまいました。もう汗もかきまくりです。ちょっとうるさいのでは、という冷静な考えも浮かんでは消え、静かに激しく続けられました。早く太鼓を打ちたい!

 
6月12日  DAY OFF

「楽打」演奏の前にインタビューがありました。笑顔を絶やさずに!

「取材」

今日は取材とTV出演がありました。ホテルのロビーでのインタビュー、そしてテレビ番組への生出演です。今日は「DIS DE SEARA」という番組で、ルーマニアで放送される、人気エンターテイメント番組ということでした。日本語の通訳さんが来て下さり、約10分間のインタビューのあとに「楽打」を演奏しました。あ、そうそう私事ですが、昨日パスポートの増補のために日本大使館に行かせて頂きました。一年中あっちこっちへ出掛けるので、パスポートはハンコだらけ。これを見るのもすごい楽しみです。ハンコひとつでいろんなことを思い出します。

領事の方に聞いたのですが、今年ももうチケットは売り切れていて、その方もなんとか手に入れたいとおっしゃっておられました。去年も見に来て下さったそうで、その時もすでに売り切れていたそうなのですが、劇場の前でなんとダフ屋がいてそこから買われたそうなのです。今年もダフ屋か、とその方は笑っておられました。どこへ行っても、どんな国でも、お客さんが来てくれることは本当にうれしいものです。明日は約2週間ぶり公演です。たまったエネルギー、存分に発揮したいと思います。

 
6月13日  Bucharest公演

公演後にレストランにてルーマニアの子供達と。

「ムルツメスク!(ありがとう)」

やっと来ました公演日!ドイツでのホリデー、テレビ出演、気付けば最後の公演から約2週間も経っていました。ツアー中、毎日のように太鼓に触れ、舞台があり、そしてお客さんがいるというこの生活が普通だった私達にとって、舞台のなかった2週間は長かった〜。ツアー生活は過酷ですが、やはり舞台は嬉しいものです。テレビ出演があったので、全く太鼓に触れていなかった訳ではありませんが、会場に搬入された太鼓達を見たときはすごく久しぶりにぐっときました。

さて、今日の会場は、アリーナよりは少し小さいタイプのスポーツホールでした。そこに舞台が設営され、客席も床にイスがたくさん並べられました。会場入りし、今日もいつものように、いや、なんせ本当に久しぶりのアンパックです。いつも以上にみんなはりきってスタートし、舞台が出来上がる前に締太鼓を全部締め終えてからバミリを始めることができました。時間を詰められたと思ったのもつかの間、今日は舞台に敷くリノリウムが四尺の大太鼓を動かす度にたわんでしまい、それを直す作業に時間がかかってしまいました。その後にフォーカスとサウンドチェックがあり、とれた練習時間はほんのわずかでした。そして迎えた本番。客席は満員。お客さんはたくさんの拍手を下さいました。普段のコンサートではあまりないことですが、コンサートが始まってから時間が経っていくにつれ、一番前の席とステージとの間の地べたに座るお客さんがずんずん増えていきました。客席と舞台の隙間がなくなっていく感じ。アンコールにはもう会場が一体なのでした。

 
6月14日  移動日

ホテルのベランダからはライトアップされたパルテノン神殿が見えます!

「ギリシャへ」

今日は朝7時にホテルを出て、飛行機に乗ってギリシャの首都アテネへやって来ました。アテネと言ったらオリンピック、パルテノン神殿、白いジュウタンと呼ばれる街並ではないでしょうか。アテネは私にとっては初めての国ですが、「倭」は3年前に来ていて、今回は2度目。ギリシャにはたくさんの古代劇場があり、前回も公演のほとんどが野外だったようです。今回も野外での公演が明日から始まります。当たり前ですが、野外というとちゃんとした天井がありません。普段、劇場の中での公演ならば、いつでも真っ暗にしてフォーカスができます。でも野外公演ではそうはいきません。日中の明るい時にはできないのです。にもかかわらず、夜中からバミリをし、日の出前にフォーカスを終えるという予定が変更になり、明日の朝から仕込みが始まる事になりました。そうです、これがギリシャではよくあること。予定は未定。目の前にある状況に全力で立ち向かうのみ。真っ昼間のフォーカスだって、なんのその!

 
6月15日  Athens公演

今日の舞台はこんな感じです!

「野外公演」

今日も朝から暑かったー!
今日と明日の公演が行われる会場はアテネの街を一望できる山の上にありました。車から見えた街並みはとてもきれいで、白いジュウタンと呼ばれていることに納得。山肌で囲まれた会場のステージには珍しく天井があり、私達が到着した時にはもう照明も吊るされてありました。今日は乗り打ち。夜中に準備が出来ないのでまたしても日中にフォーカスです。と言ってもこの日差しが降り注ぐステージで、どうやってフォーカスをするのでしょう?と思っていると、照明スタッフが、照明の明かりが床に当たってかすかに見える自分の手の影を見ながら、照明卓を操作し、フォーカスをこなしていきました。ギリシャでの公演には必須の技術、すごいと思いました。
さあ、本番。予想より早く落ちた日差しのお陰で照明もきれいにあたっていました。スタッフ一同の努力の甲斐ありです。

 
6月16日  Athens公演2日目

パルテノン神殿の前で記念撮影。

「パルテノン神殿」

今日は、劇場に入る前にパルテノン神殿に行かせて頂きました。炎天下の中、延々と丘を登ると、そのてっぺんにパルテノン神殿がありました。パルテノン神殿は修復工事がされていて、周りを鉄筋で囲われていました。丘の上からアテネの街を一望。本当に白く、美しい街です。青い空の下、真っ白い街並み。建物の窓のガラスが太陽に反射し、いろんな所でキラキラしていてめちゃめちゃきれいでした。ここだけの話、パルテノン神殿よりも景色のほうが印象に残っています。

さて、観光を楽しませて頂いたら気持ちをコンサートに切り換えて劇場入りです。ここでは私達のコンサートの前に地元のパーカッショングループのパフォーマンスがありました。私達の和太鼓とは違うノリです。踊りながら太鼓を打てるリズム感は南国の感じでした。
ギリシャは暗くなるのが遅いので、開演も21時半という遅い時間です。まだちょっと明るいうちに開演準備を済ませ、本番前の食事をとっているとパラパラと嫌な音が。誰かが雨?と言った瞬間に全員が一斉にダッシュで舞台へ。舞台には屋根がありますが、袖の両サイドのスペースには屋根がかかってなく、そこには太鼓とバチ置き、三味線もありました。私達が舞台上へ行くよりも早くスタッフが先に着いていてブルーシートをかけてくれていました。危機一髪でした。幸い、雨が強くなることはなく、開演前には止んでくれました。野外コンサートで一番心配される雨。そのせいでなぜかより一層気持ちが盛り上がったのは私だけではないはずです。アクシデントや逆境というものが時には良い影響を与えてくれる時もあるのです。

 
6月17日  移動日

ギリシャ語に対して英語とジェスチャーでコミュニケーションをとりながら新鮮な魚を選ぶメンバーとご主人。

「真夜中のバミリ」

アテネからPatraへとやってきました。移動中はバスの窓からずっと海が見えていて、宿泊するホテルのベランダからもすぐそこに青い海が見えました。Patraは海に面した町なのです。そして、やっぱり私達は海が大好きです。いつも、やっと会えた!といった感じになります。

ああ、それにしてもギリシャは暑いです。集中できずに話はあっちこっちに飛びますよ。
お昼ごはんを食べに外へ出ましたが、日差しも強く、歩いているだけで汗がタラタラ垂れてきます。 もう真夏です。とりあえずホテルから15分程行った所にあるレストランへ入りました。何を食べるかと言うと、もちろんシーフードです。海を目の前にして海の幸を味あわずにはいられません。お店には他にお客さんはいなく、(と言うか外にも人はほとんどいませんでした。ギリシャの人は、暑い日中は休んで夜の涼しい時に活動するらしいです。)無口な、でも愛想のいいご主人が私達に獲れたての魚や貝を見せてくれました。中にはまだ生きているものや、見たことがないものもいました。どれも食べてみたい私達は、とりあえず目に付いた物を「1kg!1kg!」と注文。すぐさまご主人の豪快な目分量でボールに取り分けられました。そしてその魚たちは厨房に待ち構える奥さんへ。奥さんは手渡された魚介類たちを手際よく洗い、ある物は鍋に、あるものはオーブンに放り込んだりしました。お手伝いをしたがる杉山味里にトマトとナイフを渡されましたが、あまりの手際の悪さに「ちょっと貸しなさい!」という感じで、あっという間に皿に盛り付けておられました。スピード命といった感じでした。

食後、劇場入り。今日は夜中にバミリとフォーカスを行ないました。明日の公演会場もまたまた野外ステージだからです。なんと明日の会場は紀元前160年に建てられたお城の跡なのだそうです。2000年も地中に埋まっていたお城が発見され、その跡が野外劇場になったという、とても歴史ある由緒正しきステージ。掘り起こされた外壁をそのまま活かされた貴重な建造物なだけに、壁には絶対に触れてはいけないという難しい決まりがありました。

 
6月18日  Patra公演

暑い!熱い!ギリシャ最高!締める掛け声も汗もさわやか見えました。

「太陽と星の下で」

今日もめちゃめちゃ暑かったギリシャ。
午後の一番太陽が元気な時間、黒いリノリウムが敷かれている舞台上は床から湯気が上がるのではと思うほど、とても熱くなっていました。なんとあまりの暑さに、舞台に貼ったバミリテープが溶けかけているではないですか!早速補修し、踏まないように気を付けながら舞台上を通り抜けて楽屋へ。楽屋もまたサウナのように暑く、荷物を放りなげて、すぐ外へ出ました。しかし、負けてはいられません!今日も気合いを入れ、締太鼓を締めるところからスタートです。燃えるような熱い太陽の下で締太鼓を締める。その絵を想像しただけでワクワクします。「さあ締めようか!」と腰を下ろした瞬間。私達は同時に飛び上がりました。炎天下でリノリウムがめちゃくちゃ熱くなっていることをみんな忘れていたのです。危うくおしりをヤケドするところでした。そんな暑さの中で汗だくになりながら締める締太鼓。見た目は物凄く暑苦しいのかもしれませんが、私達本人はなんてさわやかで、気持ちよかったです。

暑さは夕方には大分落ち着いてきて、本番前にはとてもきれいな夕焼けを見ることができました。そして迎えた本番、半円形の客席はお客さんでいっぱいでした。前にも横にも後ろにもお客さん。上を見上げたら星。時々吹く海からの風。なんとも素敵な夜でした。

 
6月19日  移動日

街中に「倭」のポスターが貼られてありました。明日はきっとたくさんお客さんが来てくれるでしょう。

「Thessalonikiへ」

Patraでの公演を終え、今日はギリシャ最後の都市、Thessalonikiへやって参りました。
ここは3年前のギリシャツアーでも公演をした都市です。ここでも夜に仕込みをする予定でしたが、またしても変更。なんと昨日、その劇場で行われた別のコンサートに対して爆破予告があったというではないですか。結局何もなかったのですが、念のため今日は劇場へ行くことが中止になり、明日の午前中から仕込みが始まります。仕込みは変更できても、コンサートを変更したり中止にしたりはできません。何があっても私達はコンサートをします。爆破予告。いろんな人に、いろんなことがあるのだと思いますが、私達の太鼓でなんとかできないのかと、そんなことを考えました。その時間、その空間を一緒に過ごすことで、もしかしたら何か変わるかもしれません。そう信じて明日も絶対にいいコンサートをしたいと思いました。

 
6月20日  Thessaloniki公演

客席からの眺めです。

「ギリシャ最後の夜」

しつこいようですが、今日もめちゃめちゃ暑かったです!!!!!!!
お昼頃に劇場へ入り、炎天下でアンパックスタートです。あまりの暑さに太鼓の皮が心配になり、台だけでバミリを行ないました。今日もバミリテープがとけるな、と思いながらしっかりリノリウムに貼りました。バミリが終わったらいったんホテルへ戻り、昼食に。この街にも海があり、ホテルを出て少し歩くとすぐに青い色が見えました。その色は日本で見ることのない色でした。涼しい気持ちになって昼食を頂き、街をちょっとブラブラして、そしてまた劇場へ向かいました。
今日も締太鼓を締めるところから始めます。毎度おんなじ。いや、だからこそ、こんなに暑い野外劇場、どんな締め方がよりいっそうおもしろいか、それを考えることから始まります。今日は舞台の前に高くそびえ立つ客席の一番上で締めることにしました。10kgほどの締太鼓、一番上まで階段を上って持っていくのも結構なトレーニングでした。到着し、振り返ると舞台がとても小さく見えました。横には街が見渡せ、シチュエーションは最高です。今は私達しかいないけど、この客席もお客さんでいっぱいになることを想像しながら思いっきり「締め棒」を打ち込みました。瞬時に汗だく!締め終わってから飲んだ冷たい水がめちゃめちゃおいしかったです。本当に暑くて飲んでも飲んでも喉がすぐ乾きます。今日いったい何リットル飲んだかわかりませんが、まあ相当な量を飲んだし、それ以上に体中に浴びました。

そして、少し太陽の日が落ち着いて来た頃にアンパック。やっと太鼓の登場です。しかし、ここでトラブルが!なんと停電です!太鼓を扱っている私達にはすぐにはピンときませんでしたが、電気が使えないと照明も音響も使えないのです。フォーカスもまだ終わっていないし、サウンドチェックはまだ始まってもいませんでした。

ピンチ!
停電だと楽屋も真っ暗なので常にライトを持ち歩き、早く回復することを祈りながら練習をしました。開演時間は9時半。陽が落ちていくにつれ、間に合うのかと不安がつのっていきました。そこへ電気が回復したとの声が!開場までの時間を逆算するとギリギリです。すぐにフォーカスとサウンドチェックを平行して行い、なんとか開場時間には間に合わせることができました。

空もすっかり暗くなり、風が吹き始めて涼しくなってきた頃に私達のコンサートは始まりました。Patraとは反対にお客さんまでの距離が結構ありましたが、それを感じない位にお客さんは温かかったように感じました。太鼓があって、太鼓を打つ私達がいて、それを見るお客さんがいて、その空間には同じ時間が流れていて、それは正に祭りで、一緒に生きてるということを感じました。アンコールも終わり、物凄い数の拍手に深い礼をし、ギリシャ最後の私達の祭りは終わりました。

 
6月21日  移動日

夕食のレストランでもヨーグルトをおいしくいただきました。

「ブルガリア」

さて、昨日ギリシャ公演最終の地テサロニキから飛行機を乗り継いで、ブルガリアの首都ソフィアへやって来ました。初めての地への上陸はやはりワクワクします。
さて、ブルガリアと言ったらヨーグルトでしょう。
初めてこの国を訪れる私達はこれしか頭に浮かびませんでした。私達は大のヨーグルト好きなのです。ホテルの朝食ではみんな必ずヨーグルトを食べ、日本にいる時はカスピ海ヨーグルトをメンバーが作って、これも朝食で食べていました。ブルガリアでの公演は1回。滞在は今日から3日間という短い期間ですが、ここでいったい何ができるか、何をここに残していけるか、タクシーの窓からソフィアの街並を眺めながら考えていました。考えてると、お世話になるホテルへ到着しました。いつものように、それぞれ荷物を運びに部屋へ入ってビックリ!なんとヨーグルトが置いてあるではありませんか!さすがブルガリア!!
2度のフライトでちょっと気持ち悪くなっていたおなかにすーっと染み入るヨーグルト。体も気分もすっきりさっぱり、そしてやっぱりおいしい!感動的でした。
早くも明日の朝食が楽しみな私達でした。

 
6月22日  DAY OFF

インタビューに答える土肥舞子と、カメラ目線の日高元。

「取材」

今日はホテルのロビーでのインタビューや、テレビ番組に出演しての取材が3件ありました。数人が取材を受けている間、他のメンバーは近くの公園でトレーニングをさせて頂きました。今日行なわれた数々のトレーニングの中で一番私がきつかったのは、最近あみだされた下半身強化メニューの「おんぶスクワット」でした。その名の通り、人をおんぶしてスクワットをするのです。おんぶしてしゃがむところまでは良かったのですが、そこからは上がることができませんでした。思っていた以上に人は重く、脚力はまだまだ足りないことを感じました。
トレーニングでくたくたの夜。今日撮影されたインタビューがテレビで流れると聞いたので、ずっとつけていたら・・・来ました!インタビューは、土肥舞子が自慢の筋肉を見せているところがメインでした(笑)。

 
6月23日  ブルガリア公演

この広い客席がお客さんでいっぱいになりました!

「元気」

ギリシャではずっと野外公演だったので、今日は久しぶりの劇場内公演でした。
そして初のブルガリア公演。ホテルのすぐそばの劇場は大きく、客席も舞台も広い!
その広い客席にいっぱいのお客さん!
久々の屋内公演でしたが、ギリシャでの経験を活かし、お客さんとコミュニケーションはバッチリ!
ヨーグルトパワー!?

さて、公演が終わり、撤収も終わり、夕食を食べに連れて行って頂きました。レストランまで歩いていると、昨日の取材で通訳をして下さった方とばったり会いました。彼女は今日のコンサートを見て下さり、私達と会った瞬間から今日の感想を興奮気味で話してくれました。彼女は、すごく元気になった!と言ってくれました。それを聞いて私達はもっと元気になりました。本当にうれしかったのです。私達の太鼓が誰かを元気にする。たった一人にでもそう感じてもらえたことの実感。
本当に今日ここでコンサートができたことをうれしく思いました。

 
6月24日  移動日

EURO KEBAP最高!!

「Grazへ」

あっという間のブルガリア公演から今日はオーストリアのGrazへやってまいりました。
Grazと言ったらケバブ、ケバブと言ったらGrazなのです。本当にヨーロッパでは週に数回必ず食べるケバブ、今まで何カ国の何種類の数え切れないケバブを食べてきたか計り知れません。しかしそんな中で、Grazのケバブがベスト・オブ・ケバブです。倭のケバブ王、松下建命のお墨付き。私はGrazは初めてなので、それがとても楽しみでした。

今日から2週間お世話になるホテルに到着し、そこからトラムに乗って噂のケバブ屋へ行きました。その名も「EURO KEBAP」。駅前に小さく構えたその店の前には数名のお客さんがケバブを買っていました。中をのぞくと、回ってます回ってます、ジュージューと肉汁をたらしながら大きなケバブが回っています。もうこれを見ただけでおなかが急にすいてきました。なんとこの店はケバブをはさむパンも焼いていたのです。焼きたてのパンと焼きたての皮がちょっとこげてカリッとしているチキンと、少しの野菜とたっぷりかけられたソースがなんとも絶妙なバランスなのです。めちゃめちゃおいしいではないですか!みんながここのが一番だと言っているのにも納得です。Graz滞在中に果たして私達は何回食べに来るでしょうか。もしかしたら毎日かもしれません。

 
6月25日  合宿1日目

朝のランニング中、たまたま通った道に巨大ポスター!ここでは7月4日から公演をします!

「合宿スタート」

タイトルの通り、今日から30日までの6日間はこの街で合宿です。太鼓での練習ができる会場を借りて頂きました。ホテルからその練習場へ毎日通うのです。朝から晩まで練習ができます。ツアー中、こんな機会はなかなかありません。太鼓を積んだトレーラーもブルガリアから3つの国境を越え、今Grazへ向かっていて、今日の夜にGraz到着するという連絡がありました。私達は飛行機で移動できていますが、トレーラーは何十時間、何日間もかけて移動するのです。普段、劇場へ私達が入る時にはもうトレーラーが先に着いているのが当たり前のようになってしまっていますが、国境を越えるというのはとても大変だそうです。あの大きなトレーラーに上から下、前から後ろまでビッシリと隙間なく積まれた荷物を検査されたりするそうで、もしもそういうトレーラーがもしたくさん並んでたらその上に何時間も待たなければならないのです。無事に到着することを祈りながら明日からの練習に備えて基礎トレーニングをし、合宿1日目を過ごしました。

 
6月26日  合宿2日目

建物の間を通って、どんどん運び入れました。

「ローディング」

合宿2日目が始まりました。こんな日に限って雨です。朝ご飯を食べてる時点で、まだオーストリアの国境を越えていないという連絡がドライバーからありました。不安と心配を抱えながら、しかしいつ到着してもいいように、朝ご飯を食べたらすぐに練習場へ行きました。三味線やチャッパなど、鳴り物の練習をしていると、「来た!」という声がしてみんな急いで外へ出ました。この練習場は周りを大きな建物に囲まれていて、駐車場もその入口もトレーラーに対してはちょっと小さいのです。入口からすんなり入れる訳がなく、道路に大渋滞を巻き起こしていました。止められている車の方達に「ソーリー」と愛想を振りまくことしかできない私達は、普段とは違うドライバーの真剣なそして凛々しい顔を見ることができました。

私達のトレーラーのドライバー、彼の名はユルン。彼はいつもニコニコしていて、話し方や物腰がとってもソフトで優しく、その印象は初めて会った時から変わっていません。チャームポイントはボヨーンと垂れた大きなお腹ではないでしょうか。ちなみに、代表の小川と誕生日が同じです。とにかく、ユルンのそのかっこいい姿と見事なドライブテクにみんな感動でした。練習場の隣のご主人の誘導でトレーラーの停車位置が無事に決まり、大渋滞も解消です。さあ、いよいよローディングです。雨もいつの間にか止んでいました。「倭」に入ってまだ3年も満たない若手のみによるローディング。ドキドキです。

普段の公演日は劇場へ入ると既に舞台は組まれ、太鼓や全ての道具も搬入されています。ヨーロッパでは特に、ドラマーが搬入作業をする機会はありません。以前は搬入から照明を吊る作業も、そして公演後はトレーラーを閉めるところまでやっていたと聞きます。トレーラーの中には太鼓以外にも照明、音響機材がビッシリと詰められていて、太鼓を出すには一旦全てのものを出すところから始まりました。出しても出しても出てくるフライトケース。その一番奥に太鼓のケースがありました。見慣れたケースにやっと出会え、嬉しくなりました。最後に四尺の大太鼓が下ろされ、ユルンの手によりトレーラーの扉が閉められました。振り向いた彼の顔には光る汗。思わずみんな彼に感謝の拍手をおくりました。誰かが、「いい仕事だな」と言いました。太鼓を使ってお客さんに元気やエネルギーを伝えたいと思って活動している私達。その太鼓を運んでくれるドライバーは本当になくてはならない存在です。今回も3つも国境を越え、遠い道のりを一人で走ってきてくれました。あるところでは、400台ものトラックが並んでいて気が遠くなったと言っていました。
こんな私達のクルーのエネルギーもひっくるめて倭の舞台です。

 
6月27日  合宿3日目

隣の家のおくさんと娘さんが練習を見に来ました。彼女らは昨日もチョコレートの差し入れを持って来て下さいました。

「手合わせ」

今日はまず、練習場の掃除から始まりました。昨日、早速太鼓を打っての練習をしていたら、その振動で天井から細かいチリやホコリがたくさん降ってきたのです。練習中は夢中だったのでそれほど気にならなかったのですが、今日行ってみると、一面がゴミだらけといった感じでした。

清掃後、きれいになった練習場で黙想。今日の練習がスタートです。午前中は基礎練習。まずは大久保哲朗をリーダーにした手合わせでした。この練習は、締太鼓を使ってリーダーの打つリズムをみんなが繰り返すというものです。できるだけ大久保哲朗に雰囲気を近づけ、同じ雰囲気で打つ。そしてみんなと息を合わせて打つということがポイントではないでしょうか。締太鼓の打ち方の練習と、気持ちを合わせる練習になります。特に、小さく打つ時に神経を集中させ、隣の人の音を聞きながらリズムを刻みました。集中すればするほど、音のずれが気になってきます。それをなくすようにみんながそのことに集中することも大事だと思います。それは演奏中に一つの音にみんなが集中することに?がるのではと思い、締太鼓を打ちました。

 
6月28日  合宿4日目

太鼓の周りを回りながら口唱歌をしています。「ノリ」を感じるのです。

「どこまでも響く太鼓」

今日もはりきって朝から練習場へ向かいました。雨と曇り空が続いたこの週、今日は久しぶりに晴れ、気分も晴々です。さて、基礎練習時間の午前中は、基本的な太鼓の打ち方から始まりました。一音一音丁寧に、バチの重みを感じながら、余計な力を抜いて打ちます。打ちに行くというよりは、太鼓の中に音を入れるといった感じです。動きはとてもゆっくりですが、つま先から頭のてっぺん、指先まで、あらゆる所に空気を含む気持ちで全身を動かすことを繰り返しました。静かで、そしてとても集中した時間でした。

午後からは今日の課題曲、「雷音組曲」の練習をしました。この曲は男性メンバー4人による、宮太鼓の曲と言ってもいいのではないでしょうか。いかにこの4人が息を合わせ、力強い演奏ができるかが重要です。とても迫力のある曲だと思います。玉井碧の指導にも力が入りました。一旦各パートに別れて練習していると、かすかに練習場をノックする音が聞こえました。扉を開けると、見知らぬおじさんでした。太鼓の音がうるさくて、休めないとのこと。苦情でした。こんな民家が周りにあるような所で太鼓を打ちまくったら、そりゃうるさいだろうなと思いながらよくよく話を聞いていると、なんとこのおじさんは1.5km先に住んでいると言うではありませんか。近所でこの音はなんなのだと噂になり、車でこの音源を捜し求めて来たそうです。謝らねばならないのですが、太鼓の音ってすごいと改めて思いました。

おじさんの話によると、この街では正午から午後2時までと、夕方6時以降は騒音を出してはいけないという決まりがあるそうです。知りませんでした。おじさんはその事をわざわざ教えに来て下さったのです。朝の9時から12時までと、午後2時から6時までだったらいいよと言ってもらい、その時間を守る事を約束しました。今日はもう既に6時を過ぎていたので、太鼓での練習はこれで終わりにし、明日からは1時間早くここに来ることになりました。この練習場の隣に住んでいて、いろいろとお世話をして下さっているご主人にこの事を話したら、そこらでやってる道路工事のほうがずっとうるさいのに、と笑っていました。

 
6月29日  合宿5日目

おいしそうなデニッシュにみんなの目はキラキラです。

「ミニコンサート」

私達の普段の練習は朝7時の10kmランニングから、午前中いっぱいのウエイトトレーニング、昼食後、夕食を挟んで午後から深夜までの太鼓練習と、全部で15時間以上。昨日のおじさんとの約束を守る為とはいえ、ここではちょっと練習時間が足りない私達、いつもより1時間早く練習場に来ました。

今日は午前中から本日の課題曲「兆」の練習を、新メンバーの門貴宏と向井大樹も入ってしました。「兆」は5人のメンバーによる、締太鼓の曲です。この曲にはいろんなシーンがあって、5人が順番に出たり引いたり、男性と女性または上手側と下手側、センターと周りのメンバーとのかけあいなどが見所ではないでしょうか。また、5人で一つの音楽を作りだす、雨のシーンはとても慎重で、うまく息が合った時はきれいなハーモニーになります。イメージを強く持って演奏することが重要です。そしてなにより、小さな締太鼓一つでそれらを表現する訳ですから、その人自身の迫力と人間性が大事だと考えます。どの曲でも言えることだと思いますが、太鼓の技術やテクニックは関係ないと思うことが多々あります。演奏している所を見ていても、一緒に演奏していても、やはり気になるのは上手い下手よりもその人がどれだけ本気か、真剣か、一生懸命かというところです。

この曲を覚えたての門貴宏と向井大樹にも、楽譜を覚えて上手に打つことが大事なのではなく、それ以上に大事なことがあるということをわかってもらいたいし、上手く説明はできなくても少しでも先輩である私達がそれを身をもって伝えていきたいものです。そう思い、隣で練習している門貴宏にギャーギャー言わせて頂きました。

そんな中、今日も練習場をノックする音が。恐る恐る扉を開けると、そこには見覚えのある顔が。実は練習初日にも、聞いたこともないような騒音に何事かと様子を見にきた親子がいたのですが、その時のお母さんと男の子でした。太鼓に興味をもったその親子は練習を見学し、今度ケーキを作ってくると約束をしてくれました。今日はお母さんと男の子の他に、お父さん、お兄さん、女の子の5人家族で来てくれました。なんとお母さんの手にはこの前の約束通り、ケーキが!大きなプレートにてんこ盛りになったデニッシュの山に大歓声が起こりました。急いでテーブルとイスと飲み物を出してきておやつタイムです。お母さんはいろんな種類のものを作ってくれて、中でも自家製ラズベリーのデニッシュがめちゃめちゃおいしかったです。練習で疲れた体にはとてもうれしいスイーツ。お母さんは少しでも長くここにいれるようにと、昨日の夜からこれらを作ってくれていたそうです。本当にうれしかったです。

毎日騒音でお騒がせしている上に、おいしいおやつまで頂いて、頭が上がりません。どうにかお礼はできないものかと考え、ミニコンサートをさせて頂きました。「兆」、「我楽多」、「楽打」の3曲をこのご家族に感謝の気持ちを込めて演奏しました。この人達のために、という気持ちがみんな同じだったせいか、その雰囲気、エネルギー、テンションがとても高かったです。本当の家族の前で演奏するような照れくさい感じがありましたが、時々顔見ると笑ってくれていて、それがまた私達もうれしかったです。ご家族もとても楽しんで下さったようです。お互いにありがとうと言い合っていると、お兄さんが是非一緒に食事をしたい、うちでバーベキューパーティーをしようと言ってくれました。またもや大歓声です。もちろん行きたいと即答でした。何か私達にできることはないかと聞くと、お腹を空かせて来て、と優しいお母さん。がってん!たやすいご用だと返事をし、明日の夜に約束にまた会うことを約束させて頂きました。さあ、バーベキューのためにお腹を空かせるぞと練習を再開した私達でした。

 
6月30日  合宿最終日

「倭」の男性陣と一緒に積み込みをする通りすがりの男の子。

「撤収」

気付けば今日で6月が終わります。私達の合宿も今日で終わりです。心配していた雨も止んで、青空が広がっていました。午前中に総まとめとしてプログラムの通しリハーサルをし、合宿が終了しました。合宿期間中は自炊ができたので、そんな時の恒例行事、食材総決算的昼食を終え、この練習場とも別れを惜しみながらのパッキングが始まりました。うれしいことに、隣の女の子、ジャスミンが手伝いに来てくれました。締太鼓の台をたたんだり、一緒にフライトケースに入れる作業などをしてくれました。太鼓のパッキングが終わったら、太鼓とフライトケースをどんどんトレーラーへ運んで行きます。ジャスミンも何回も練習場とトレーラーを行ったり来たりして一緒に運んでくれました。

トレーラーの所へ行くと、あれ?なんか人が多いぞ?知らない男の子3人が積み込みをしているではありませんか。たまたま通りかかったという彼ら、倭の男性陣に負けないくらい勢いよく働いていました。ジャスミンと、この3人の男の子達の手も借りて、無事に搬出作業は終わりました。彼らは練習場の最後の掃除まで付き合ってくれました。

この合宿期間、貴重な時間だったのは練習だけではありませんでした。得る事ができたものは太鼓の技術だけではありませんでした。ご近所の方々との出会い、騒音による苦情の後の約束、それからミニコンサート。私達は本当にとてつもなくうるさかったと思います。なんせ1.5キロメートル先まで聞こえていたのですから。にも関わらず、ありがとう・・・。

ジャスミンとお別れをし、ホテルへ帰りました。夜は昨日のZecファミリーとバーベキューパーティーです。練習と搬出作業で汗だくになったのでシャワーを浴び、約束の時間に待ち合わせ場所へ行くと、13歳のNevenが迎えに来てくれていました。Zecファミリーのお宅は本当に練習場のすぐ裏側にあり、こりゃ相当うるさかっただろうなと思いながら近づいて行くと、庭ではすでにお父さんが何かを焼き始めていて、いいけむりが上がっていました。いろんな種類のソーセージやごっついステーキ、プチトマトなどを焼いていました。バーベキュー大好きな私達。お腹が破裂するというほどに食べまくり、暗くなったらみんなで輪になって座り、ギターの先生をしているお母さんのギターを聞かせてもらったり、一緒に歌ったり、「倭」からは大久保哲朗が名曲「脱衣」を披露したり、本当に素敵な夜を過ごさせて頂きました。もうここの家の子になりたいとみんな思いながら、別れを惜しみパーティーは終わりました。